第4話 僕を投げ飛ばした幼女の実態
お嬢ちゃんの話によれば、彼女の名前はマルチーヌ・ブラウン。
見た目は六歳ぐらいだが 、実年齢は二十六歳。親父さんは、父親では無くマルチーヌさんの付き人。
マルチーヌさんは、ウオヂという格闘技の師範代になるぐらいの腕の持ち主。父親の道場で何人かの弟子を抱えていた。
父親の弟子で一番の実力者だったダリンという青年と一人娘のマルチーヌさんを結婚させようとお父さんはしていたが、ダリンは大勢の女性のファンがいるぐらいの超モテモテ美青年。
その話を知った、ダリンのファンの一人である、目狐(名前は知らないらしい)女が、ある日マルチーヌさんを呼び出した。
ちなみに女狐ではなく目狐。目が狐みたいにつり上がっているから、そうあだ名を付けたらしい。
その目狐に呼び出されたマルチーヌさんは決闘なら負けないわと、意気込んで行ったところ、よく分からない古術魔法で今の六歳の姿に変えられてしまったという。
「古術魔法が原因だと、何故分かったんですか ?」
「魔法を調べているうちに、若返らせたり、老けさせたりする魔法は昔の禁術魔法にあったというのを知ったからよ」
「その目狐さんの居場所は知っているんですか?」
「知らないわ。こうやって魔法のことと目狐の居場所を探しながら旅をすることで少しずつ情報を得ているという感じね」
「マルチーヌさんは、魔法は全部独学自力なんですか?」
「ええ、そうよ。最初は自力で魔法を解くために。それが難しそうだと分かったから今度は魔法大会に出ながら、目狐情報を探してる、そういう感じよ」
「魔法はいつから、目狐さんに魔法をかけられたのって何年前ですか?」
「もうすぐ二年になるかしら。……ねぇ、カズマ、あたしの話、信じてくれるの? 子供が何言ってるんだ って思わないの?」
「はい。マルチーヌさんと戦って身のこなしに凄いものを感じました。あれって格闘技の影響だったんですね。だから分かります。作り話じゃないって」
「姐さんと呼んでいいわよ。マルチーヌって言いにくいでしょ。それに本来は子供じゃないという自分を自覚できていいのよ」
照れたようにマルチーヌ……姐さんは言った。
でも僕は本当にスッと何の疑いもなく信じたんだ。それが一番、しっくりいくから。
「姐さんの力になってやってくれ。俺は、腕力だけで魔法のことは何も分からないから」
さっきとは逆に、ディンパさんの方が僕の両手を握って、握って、う、あ……
「痛い! いたたた」
「すまん、力が入りすぎた」
そうだよなぁ、ディンパ さん魔法得意そうじゃないもんな。それなのに、弟子入りしようとしていた僕って。
「ディンパさんも、姐さんのお父さんの弟子だったんですか?」
「俺は隣町の道場で力を持て余していたんだ。それで道場破りとして行ったところ、姐さんに簡単に投げ飛ばされてしまって、それから姐さんと呼んでついていくことに決めたんだ」
投げ飛ばした? ディンパさんのような大男を? いやまぁ、今はこうやって可愛らしい女の子だからピンとこないだけで、大人の姐さんはディンパさんに負けないような熊女なのかもしれないし……。
僕はこうやって見た目は幼女の姐さんと、その父親かと思った熊男のディンパさんと旅をする事になった。
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