第3話 僕の弟子志願

ん? 寝ていた? ああ、宙を舞って頭を打ち気を失っ ていたんだ。

 気が付くと僕はどこかのベットに寝かされていた。周りを見渡すと、さっきの親子がベットの傍にある椅子に座り食事を取っていた。それも貪り喰うように。

「あ、あのぉ」

 何だか邪魔しちゃいけないような気になって遠慮がちに声を掛けた。

「起きた? 本当にごめんね。食べる?」

 幼女が肉料理が盛ってある皿の一つを僕の方に差し出した。

 とても芳しい香りに誘われて僕は体を起こして親子が食事しているテーブルについた。

 そして「いただきます」と親子ほどじゃないにしても一心不乱に食べ始めた。

 ある程度、お腹が満たされた辺りでやっと僕は、ここがどこなのか? という質問をした。

「あたしたちが今日泊まる宿よ。あたしが悪かったわけだし、 あのまま、ほおっておけなかったから連れてきたの」

「あ、すみません、ありがとうございます」

 ずっと年下の女の子にこういう言い方は変な気がしたが、ここに連れてきてもらって僕としてもありがたいなと思った。

 あ、そうだ、僕は親父さんに弟子入りのお願いをするつもりでいたんだと今更ながらに思い出し箸を止めて親父さんの方を見つめた。

 筋肉隆々の熊といった感じの人だ。魔法使いとしては珍しいタイプかもしれない。それとも、この鍛え上げられた肉体だからこそ魔法の力も強いというのだろうか。あ、でもお嬢ちゃんは小さな体だよな。

「どうした坊主? もう腹いっぱいか?」

 よし、言ってしまおう!

「僕を弟子にして下さい」

「はい?」

 すっとんきょうな 声を上げたのは、お嬢ちゃんの方だった。構わず僕は続けた。

「今日、お嬢さんに負けて身にしみました。僕は井の中の蛙だったと。僕には師匠がいません。なので一人で強くなるには限界があります。お願いします、身の回りのお世話などもさせて頂きます。どうか、弟子にして下さい」

 何の返事も無い。頭を下げていたが、親父さんの様子を伺ってみる。何かきょとんとしている。

 僕、何か変な事言ったかなぁ。

「弟子だって」

 お嬢ちゃんが親父さんにニヤニヤしながら言う。親父さんは、まだきょとんと固まったまま何も返事をしてくれない。

 僕、突然過ぎたのかなぁ? この親子、長く旅をしている様子だし、それにしても母親らしき人もいないし親一人、子一人でやってきて弟子 を取るということも無かったんだろうな。

「坊主、お前さん、格闘なんぞやらんだろうに」

 へっ? 親父さんの言った意味が分からない。

「ディンパ。坊やが弟子入りしたいのは魔法よ。ね? そうでしょ?」

 意味が分からないが、お嬢ちゃんの言う通りだ。

「僕は魔法には、かなり自信がありました。けれど今日、お嬢さんに負けてもっと修行が必要だと強く感じました。お願いします!」

 親父さんは僕では無く、お嬢ちゃんの方を向いて何か言いたそうにしている。

「分かったわ。坊や、名前は確かカズマだったかしら? カズマは、魔法学や魔法の歴史なんかや古術魔法なんかの知識はある?」

 内気な親父さんなのか? まるで、お嬢ちゃんが代わりのように僕に話しかけてき た。

「はい、魔法関連の知識なら今までかなり学んできました。古術魔法も少しだけですが知識をかじっています」

「よっしゃ、ならば弟子にしてあげる」

 親父さんは何も言っていないが、お嬢ちゃんからお許しが出た。僕は親父さんの両手を握って感謝を伝えた。親父さんは、まだ僕を見てくれないで、お嬢ちゃんにまるで助けを求めるかのような表情を向けた。

「しょうがないわねぇ。弟子にするからには全部話すわよ。ディンパ、デザートよろしく」



 デザートをリクエストされた親父さんが大量のお菓子を持ち帰ってから、やっと話が始まった。それは、親父さんからでは無く、お嬢ちゃんから。

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