第2話 僕と魔法

 僕は小学生の頃から神童と呼ばれるほど、魔法の天才だった。昔から魔法大会ではいつも優勝。高校でも、ライバルになりそうな奴すらいない。

 それぐらいに僕は周りに敵無しというぐらい魔法にかけては自信があったんだ。


 それを、あんな幼女に。始まってすぐに負けてしまうなんて。まだ六歳ぐらいなんじゃないだろうか。もしかしたらそれよりも幼いかもしれない。そんな幼女をあそこまでの腕にするぐらいだ、きっとあのお父さんは只者じゃないはず。

 あのお父さんに弟子入りをお願いしよう。

 今まで僕には、師匠らしい師匠はいなかった。だから師匠を得ればもっと強くなれるはずだ。


 親子が競技場を出で少ししたところで僕は親子に駆け寄った 。

 親子は前を歩いていたので後ろから追う形で。

「あ、あの」

 と声をかけたとのと同時に僕は宙を舞っていた。魔法? 親父さんの方じゃなく、またしてもあの幼女の方に僕はやられてしまった。

「あ、ごめん。さっきの坊やね」

 仰向けに倒れた僕の顔を覗き込みながら幼女は言った。坊や? お嬢ちゃんが僕に言うには、おかしな言い方では無いだろうか。

「大丈夫か? 殺気も無いし、君に悪気が無さそうなのは分かるよ。でも姐さんの後ろから駆け寄ったら危ないんだ。条件反射だからな」

 この親父さんは何を言っているのだろう? 少し頭がクラクラする。僕が親子の言っている事を聴けて無いのだろうか。



僕の両親は、勉強の出来る兄と可愛い外見の妹は可愛がっていたが平凡な僕の事は然程可愛がってくれなかった。

本当はそんなに両親の事が好きだったわけじゃないのに、僕の事を見てほしい。認めてほしいとムキになっていたんだと思う

僕は物心ついた頃から自分に向いていると察知した魔法で何とか両親に振り向いて欲しくて頑張っていた。

親以外の周りは、大会で優勝していく僕に「すごーい」と言ってくれたけど

両親は興味ないようだった。

優勝した僕より、80点を取った兄を

近所で可愛いねと言われただけの妹を

両親は自慢そうに喜ぶのだった。


どこまで魔法で勝ち続ければ両親は僕を見てくれるのだろう?

そう思い続けてきたけれど、高校の卒業式が終わったら何だかもうどうでもいい気がしてきてしまった。


僕は衝動的に荷物をまとめて家を出た。

もう僕を見てくれない両親の元にいるのも辛い。

一人で生きていこうと。


とは言っても、魔法しか取り柄の無い僕が

突然の家出から生活していくには、今回のような町の小さな大会の賞金や副賞を目当てにするしかなかった。

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