姐さん幼女

ピューレラ

第1話 僕を負かした幼女

「参りました」

 屈辱だ。僕の口からこんな降参の言葉を吐く日がくるなんて。

 しかも、その相手が僕よりずっと下の幼い女の子だなんて。

 街の魔法大会はもちろん、大きな大会でも負け知らずだった僕は、町おこしの一環のような小さな魔法大会ぐらい余所見をしていても勝てると思っていたのに、準決勝であたった女の子に嘘みたいにアッサリ負けてしまった。桜の花びらが吹雪のように負けた僕の体に当たっていく。みじめだ……。


 こんな小さな大会、本当なら僕は出るはずじゃなかったんだ。いや、そんなことは今はどうでもいい。それよりも、それよりも……。

 僕を負かした女の子は、次の決勝も始まってすぐに簡単に勝ってしまった。そりゃあそうだろう。 相手は、僕よりずっと弱い。

僕に勝ったあの子が負けるはずがない。

この魔法大会は、他の魔法大会同様一般的なルールのものだった。

ルールは簡単。

魔法で相手を30秒以上拘束するか、場外にすればいい。

魔法を使うので相手との体格差があっても、魔法が強い方が勝つ。

だから僕よりずっと小さいあの子が勝った。

 僕は自分の試合が終わった後も、控え室に戻るよりも、あの幼女から目が離せなかった。


 あの子のお父さんだろうか? 何か格闘技でもやっていそうな体格のいい熊みたいな男の人が、あの子の代わりに優勝賞金と副賞の豚肉の塊を高々と掲げていた。

 少し離れたところからでも、その男の人がただ者では無い強さであるのは僕には伝わってきた。きっと、あの子の師匠なのだろう。

「よし!」

 僕は、控え室に向かおうとする親子にロックオンし後を着いて行く事にした。

 親子が控え室に入り、出て会場を後にするまで僕は辛抱強く耐えた。人に見られたくは無い。親子の周りに誰もいなくなった時を見計らってコト を起こしたいのだ。

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