石に貴賤はあるのです(有料ガチャのひみつ)
さあガチャを引くぞ!と思ったとき、メニューにこんなものが提示されてるのを見かけることがあるだろう。
「1回限り!最高レア1体確定ガチャ!」
これは非常に魅力的な内容であり「これは引くしかない!引かざるを得ない!」と思って画面をタップしてみると、そこにはたいていこんな文字も書かれている。
「このガチャは有料の石でのみ引くことができます。」
そう、いわゆる課金限定ガチャである。
ここでいう「石」とは、アイテム購入やガチャの権利を得るために使用するゲーム専用のポイントのことだ。石はログインボーナスで獲得できるものと現金で購入できるものがあり、この場合は無料でもらえる石をどれだけ積み上げても引くことができない。無課金勢は涙で枕を濡らすのみだ。
課金というのは不思議なもので、完全無課金の場合は鉄の意志で最後まで課金をしない場合が多いが、少しでも課金をした人はそのあともチャンスがあれば課金を積み重ねる。
そのハードルを可能な限り下げる手段として「最初の1回がお得だよ!」というイメージを持たせるのが運営サイドの作戦なのである。
ところで、なぜ石は「無料」と「有料」に分けられているのだろうか。
実はこの概念は、「有料ガチャ」を提供するために作られたものではない。
消費者を守るための「ある法律」によって定められたものを利用しているだけなのだ。
そもそも、なぜガチャやアイテムが直接現金で購入できないようになっているのかから考えてみよう。
この答えは非常に簡単、「返金対応が難しいから」である。
じつは「消費者に現金を払い戻す」という作業は非常に難易度が高い。決済会社への手続きが必要だったり、現金を直接郵送する場合は現金書留が必要だったり、振り込むなら口座番号を提供してもらったりと、とにかくカロリーがかかりすぎる。
これがゲーム内のポイント(石)であれば対象のIDに対して金額分の石をぶち込む(言い方が汚くて恐縮だが)だけで済む。また、軽いトラブルであれば少量の石……俗にいう「詫び石」を配布できるなど、石が存在するメリットは運営側にとって非常に多い。
ところが、石という概念を用意したことで、先ほど述べた「ある法律」を守らなければならなくなる。
その法律とは「
詳細は割愛するが、かいつまんで言うと「現金に準じた使い方ができるポイントを提供する場合、その保障をするために全体の半額分の供託金を積む必要があるよ!」という法律だ。その対象になるポイントとは「使用期限が6ヵ月以上かつ、未使用残高が1,000万円以上プールされているもの」となっている。
ケータイアプリの場合、一部プラットフォーム(りんご)側の都合により使用期限を設けることを禁じられているため、早い話が1,000万円以上の石が積みあがった時点で供託金を用意しなければならない。
はっきり言って、運営側にとって供託金は塩漬けの現金となり無駄になる。幸い、現金で購入されたポイントのみが対象となるため、無償で配布したものと区別しておけば供託金を少しでも減らすことができる。
ここまでお読みいただいた方はもうお気づきだろう。有償と無償の石が区別されているのは資金決済法のためなのである。
この概念を利用して「有料石でのみ購入できるガチャ」というものを思いついた人は流石であると言わざるを得ない。
ちなみに、資金決済法の対象になるポイント(石)がある場合、「表示義務」と「情報提供義務」が発生する。たいていのアプリにはオプションやヘルプに記載されていると思うので探してみよう。
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