第4話 ズッキーニ
私は、今ズッキーニを育てている。
数年前から、ベランダ栽培を楽しんでいる。
一番最初のきっかけは、ある人との会話からだ。
その頃私は、美容師をしていた。
「ミニトマト作ってるの、楽しいわよ」
随分若いお客様で、見るからに、おしゃれで洗練された方で、ベランダ栽培をしているような感じに見えなかった。本当にこの頃の私の考えは失礼で、花とか、野菜とかをする人は、洗練と遠い人だと思っていた。
それで、それまでしたことのない想像をしてみた。
収穫したばかりの野菜が食卓に並んだらどうだろう?
私の今までの考え方はすぐに変化した。
「収穫したての野菜が食卓に並ぶなんて、なんて素敵で贅沢な事だろう」と思うようになった。
それから、私のベランダ栽培は始まった。
それで今年は、ズッキーニにを育てているのである。
育てた事のある野菜は、安心だけど、育てた事のない野菜を育てたくなる。
そして苗を買いに行った。
いつもの事であるが、勉強するのは買ってから。
かなりアバウト。
ズッキーニに雌花と雄花があってということも知らずに苗を買った。
花が咲いてきたが、私の買った苗、2つ買ったが、両方とも雄花ばかりしか咲かないし、蕾も雄花ばかり。
かなりショックだ。
これでは実がならないではないか。
それで、ホームセンターの苗を売ってるところで、ズッキーニの雌花ばかりの苗を見つけたのだ。
ただ、問題は、少し傷んでるというか、元気がないのだ。
その分、若干安くなっているが、お家で植えてすぐ枯れてしまっては、ショックである。どうしようか悩んでいて、顔を上げたら、おばさんと目があった。
「受粉したら実がなりますかね?」
私が聞くと、
「ズッキーニ、私は、駄目だったわ」
とおばさん。
「家のズッキーニ、雄花ばかりなんですよ」
と私。
それで、そのおばさん、店員さんに、
「ズッキーニは難しいわよね」
「そうですね、まあ、上手にやる人もいますがね」
と店員さん。
「私だったら、ズッキーニではなく、カボチャを買うわ」
とおばさん。
私は、その間、取り合えず笑顔。
それで、何か疲れたのです。だって、私は、ズッキーニが欲しいのだし、別に店員さんに聞いてほしかった訳ではないし、なのに、気を使って愛想笑いをしなければいけないし、何か面白くない気分になってしまったのです。
乱暴な言い方になりますが、どうしてズッキーニが欲しい私にカボチャを買えと言うのか私にはさっぱり意味不明。
それで、ちょっと想像してみました。
あのおばさんは、ズッキーニを育てる事に失敗しているので、ズッキーニは何か嫌だし、アドバイスをしてあげたくても成功してないので、できないのでしょう。それで、成功体験のあるカボチャを進めたり、店員さんに、助けを求めたのでしょう。
そう思ったらちょっと気持ちが楽になりました。
ただもう一つ引っ掛かる。
頼んでないことをしてくれた時に、それに合わせるべきかどうかということ。
多分、それぐらい合わせてあげればいいのかもしれないが、私は、嫌です。
だいたい理屈に合ってない。
望んでないものをありがたくは思えない。
それでも、ありがたそうにする必要があるのだろうか?
本当はないと思うのです。
だって、ありがたそうにしていたら、とんでもないことになってしまう可能性もありますし。
だから、余計なお世話や、自分の考えを押し付ける人は適当にスルーしようと今日から決めます。
ただし、本当の思いやりらしきものに出会った時には、感謝しよう。
それはとても素敵でありがたいこと。
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