第3話 調査前夜(ver2.0)
『今年の始業式の日、尼子宗大に生卵が投げられた前後、何を見たのか? それをこの四人に訊いてきてくれ。
3年
2年 錦屋いなり
1年
文面はそれだけであった。
とある事情を知ってしまったため、話しづらい人間が一人含まれていた。だが、受けてしまった以上は話を聞きに行くしかない。
『分かった。可能な限り早くこの四人に話を聞きに行く。それとちょっと質問があるんだが、どうして前者の俺の推理が正しいと思ったのか。その根拠がもっと知りたい』
そう返信すると、十分後くらいにはもう返事が返ってきた。
『尼子宗大、尼子美羅、藤沼善治郎が事件の三週間前に会った後、レイプ犯と被害者の二人きりにしたのは何故か? 通り魔に襲われた四人は警棒であったのに対し、尼子美羅だけはナイフで襲おうとしたか、それは何故か? 考えれば分かる事だ。だが、実行犯が自殺した以上、真相は闇の中だ』
離婚する前に、尼子美羅を始末しておきたかったという事なのか。
離婚する前に尼子美羅が死亡してしまっては、離婚する時期がずれることになる。
そうしないためにも、離婚後自殺するという流れにするのが一番なのか。
離婚後であれば『離婚を境に』心を病んで自殺したとされるかもしれない。
自殺しなかったとしても、人間的に壊れてしまっている可能性も捨てきれず、尼子宗大にしてみれば再婚するにあたり、実の娘の尼子美羅が邪魔であったので表舞台から去って欲しかったというのが正直なところなのかもしれない。
もしかしたら、離婚することを知っていた上でグループ内で尼子美羅を担ぎ上げようとしていた一派が存在していたのかもしれない。
「……俺は粛々と依頼をこなすしかないんだけどな」
離婚そして再婚予定の流れがあるとはいえ、とはいえ、紅雀が言うように実行犯が自殺したし、当の尼子美羅も去ってしまった以上、真相は闇の中だ。
あの件はあれでよかったのかもしれない。
あの事件がきっかけとなって、離婚が早まったり、尼子美羅が逃げ切る事ができたとかそういった事があったのかもしれない。
だとしたら、もう下手に掘り返さない方がいいのかもしれない。
とりあえず、明日から依頼をこなすか。
四人程度に始業式の事を訊けばいいだけだし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます