違う日常

ブブブブ ブブブブ


 ガンッ


「 あぉう!! 」


 机の上に置きっぱなしだったスマホが突然震えたのにびっくりして机に脚をぶつけてもだえる。

 涙目になって脚をさすりながら、この痛みの元凶よなったスマホの表示を見る。


 七海


 時間的には午後八時を回ったばかりだから、七海から連絡が入るのは不思議な事ではないけど、電話じゃない事に少し違和感を感じた。


 [ 明日から2~3日は用事があるので学校を休みます。間違って迎えに来ないようにね。それと、ケータイが繋がりにくいところに行くので連絡来てても返信できないかも ]


「 へ~、珍しいな学校休むなんて 」


 俺は特に疑問を持つことなくメールの内容に[学校休みなんて羨ましいな]くらいの感想しか抱かなかった。




 俺と七海が一緒にいることが当たり前の世界になりつつある現在。

 朝起きてから迎えに行ってそのまま登校。

 学校の中でも七海といない間に他の友達とバカ話をするような時間の使い方をし、もちろんお昼は一緒に食べる。場所は屋上だったり教室で食べたり中庭で食べたり、食べる場所は問題じゃなく七海と食べる事に意味がある。

 放課後はもちろん一緒に帰るけど、友達からの誘いがあればそれに付いて行ってみんなでわいわい騒ぐこともある。

 それから七海を家まで送っていく。七海の家族にはまだ正式にあった事はない。時々見かけて挨拶する程度だけど、そんなに悪い印象は与えていないと思う。


 数日でも自分の側に七海がいない日ができるなんて想像もしてなかった。

 学校に登校した俺が真っ先に聞かれることは決まって七海と一緒に来ていない事の不思議な事情。それから次に多いのは挨拶にも近いけど、一緒にいないだけで別れたのかと冷やかし半分期待半分で聞いてくる会話。


 みんなから聞かれる事が多いことで改めて気づく。

 自分の側に七海がいることがみんなにも普通な事であり、当たり前になっている世界なのだと。



 なんだか別の世界に迷い込んだみたいだ…。


 七海がいないだけなのに…。


 一日中クラスメイトや友達との会話を楽しみつつもどこか心あらずな自分が存在する。

 七海が何してるのか気になる。頭の片隅にはどうしても七海の存在…あの笑顔が浮かんでくるんだ。

 無意識だからどうしようもない。


 何事もなく七海のいない初日が終わっていく。

 授業が終って放課後になっていつもなら七海が側に来るけど、今日はそれが無い。


 寂しいな…。


 そんな思いを抱きながら真っすぐ自分の家に向けて帰って行った。


 メールをしてもアプリから会話を振ってもどちらにも反応がない。

 ベッドの中でもだえながら七海からの返事を待ったけど、結局この日はスマホの表示に七海の文字が出ることは無かった。



 七海が学校を休むと言っていた三日目の朝、ようやくスマホの表示に七海という文字があることに気付いた時は凄く嬉しかった。

 心から安心したというか…何だろうこの気持ちは…。

 少ししか離れてないのに、もう何年もあってないような感覚。


「 今日の夕方にはウチにいます。ごめんね連絡できなくて。もうすぐ会えるよ 」


 それだけがメッセージされていただけなのに少ウルっと来てしまった。


 俺は七海の事がこんなに…。


 足取り軽く学校へと向かう。

 放課後になれば会える。

 それだけが心の中を雲のない晴れ間へさせるには充分だった。


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