七海の心
私には忘れられない人がいる…。
入学試験の日、朝起きたらすごい熱が有って顔は真っ赤になっていた。
それを見た母は、今日の学校は諦めなさいと言って止めた。別な日に行われる学校に集中すればいいじゃないと。
諦めることができなった。
学校のランク的にはお世辞にも高いとは言えないけど、学校案内を見た時に一目ぼれしたのだ。
学校に続く道が海岸線までずっと桜並木になっていた事に。
想像してしまったのだ。
そこを通う自分
恋人と並んで歩く自分を。
自分が行きたいと思っていた学校だったから無理してでも受けることに決めた。
そして出会ったのだ…。
重くて熱っぽい体を引きずるように登校して受験を何とか受けていた。
マスクにメガネ。そして赤い顔
完全に病人ですってアピールしているみたい。
でもこの学校は受けたかった。満足な結果にならなくても、受験しに行かなくちゃならないと心が訴えていたから。
予想通り、受験生なんてみんながみんな余裕がなくて、、私の事なんて見てる人はいないと思っていた。
「 体調…大丈夫? 」
「 へ!? 」
自分の受験場所の机に突っ伏したままお昼の休憩時間が半分を過ぎた頃、その子は話しかけてきたのだ。
「 俺さぁ…君の隣でずっと気になってたんだ。君…本当は体調悪いんだろ? 」
「 え!? あ、うん。そうだげど… 」
鼻も詰まっているらしく言葉がちゃんと出ないし、声がいつもと違う。
恥ずかしい!!
私はそう思ってまともにその人の顔を見れなかった。
「 そうか…なら、無理そうならすぐに言いなよ。俺が試験官に行ってあげるから 」
「 あ、あでぃがどう 」
「 これ…良かったら飲みなよ。少しは胃に入れた方がいいから 」
そういうと彼はオレンジジュースを机の上に置いて「じゃぁ」って言って出て行ってしまった。
良い人だな…優しい…。
その時はそう思っただけだった。
午後の教科を何とか受け終わって一息ついた時、安心したのかそのまま机の上から起き上がれそうもないくらい脱力してしまった。
周りでは誰も気付いていない。
終った安堵感から友達同士で話し合いながら試験会場の教室から足早に出て行ってしまう。
「 すいませ~ん!! 」
隣から聞こえる男の子の声。
誰かを呼んでいるようだ。
「 どうしました? 」
「 俺の隣の子…体調悪いみたいなんです 」
「「 え!? 」」
その場に来てくれた試験官らしい男の人と私の声が重なる。
まさか…私の為に?
「 後はお願いできますか? 」
「 ええ。大丈夫ですよ。あなたもお疲れさまでした 」
「 いえ…俺は何もしていないので 」
「 あ、きみ!! 一応名前を聞いておこうかな 」
私はそのまま何も言わないで会話を聞いていた。
だるい体で意識も保つのがやっとの状態だったけど、その子の名前も気になったから。
その間にもう一人の女性らしい面接官の人も現れて抱きかかえられるように車いすに運ばれる私。
「 滝川…滝川勇樹です 」
「 滝川君か。感謝するよ 」
滝川君…かぁ…。
スーっと意識がなくなりかけた時、その子の声が耳の近くで聞こえた…気がした。
「 縁が有ったらまた会えるよ。その時はよろしくね 」
私はたぶん顔が真っ赤になっていただろうな。恥ずかしさと嬉しさが顔に出てたと思う。
元々熱で赤かったからわからないだろうけど。
私の心はその時に彼を求めるようになった。
必ずこの学校に受かって見せるって思った。
合格発表の日は朝からソワソワ。
何をしてても落ち付かなかった。
まだ発表が貼りだされる前から学校に行こうと思ってバスに乗り込んだ。
もしかしたら彼も来てるかもしれない。
彼に会えるかもしれないって思って。
それがあの日あんなことになるなって思ってなかった。
彼を傷つける事になっちゃうなんて…。
無事だと知って嬉しかった。お見舞いにも行きたっかった。
でも嫌われていたらどうしよう…そんなことを考えていけないまま日数だけが過ぎて行った。
見事に合格していて彼と一緒に歩きたかったこの桜並木もすでに夏の装いを始めている。
あの子が合格してることも、同じクラスになった事も私には偶然とは思えなかった。
でも、まだこの学校にその姿は無い…。
友達と歩いていた職員室の前の廊下で、ドアから出てきた後ろ姿と声を見た時、心臓がドキンと止まったような感覚がした。
あの子が…いる!!
気がついたら歩き出して近づいていた。
「 滝川君? 」
私にはけっこう勇気が必要な大胆な一言だったんだよ。
出会った今。
隣にその
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