第六話「蛍のような暖かい人」

「天満?」

「…銀様。私の傍から離れないでください」

ギュッと拳を握りしめ、震える小さな手を銀はそっと優しく包んだ。

「大丈夫だ」


黒狼でいる時は魔界にいる時。

人間でいる時は人間界にいる時。


たまに、二人きりでいる時は、黒狼のままだ。

「銀様…」

どこか辛そうで悲しんでる天満。

(昨日の夢が嘘だったら…いいな)


「大丈夫か?悪い夢でも…?」

「…銀様が私の傍から離れてしまう夢を見たんです」

「そうか。だから、最近ずっと落ち込んでるだな」


沈黙がしばらく続いた。


「私は母と違って、特別な能力なんて持ってないんです。だから、どうしようもできなくて…」


「安心しろ。俺が君の人生の最後まで守り続けると誓うよ」

「銀様」


少し切なさはあるけど、天満にとって…それは、まるで夢のような嬉しい言葉だった。


「蛍のような暖かい人ですね」



「これからもずっと一緒だ」

「はい!銀様!」


銀はベールを付けてブーケを持つ天満を抱きしめた。


ここにいる小さな幸せと一緒に…。


〜終わり〜

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黒狼の花婿と女子高生の花嫁〜こんな愛情アリですか?〜 ドーナツパンダ @donatupanda

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