調整官、王都を目指す(1)
表向きは舞踏会への招待だが、ぶっちゃけて言えば、ヴェルセン王国から私たちへの呼び出しだ。しかも、そのメッセージを調整官である私ではなく、迫田さんに送ったのは、彼が男だからだ、絶対に。これだから封建主義は!
しかし、だからといって、呼び出しを無視するわけにも行かない。わが村に隣接するヴェルセン王国とは、有効な関係を築いておかなければならない。双方に痛手を残して終わった悲劇を、繰り返さないためにも。
舞踏会は、十日後に開催される。蓬莱村から王都までは三日かかるので、準備には七日しかない。早速、王都に上る準備をしないと。とりあえず、村の在庫の中から、献上品となるものを選ばなければならない。呼ばれた側が贈り物を用意するというのも、現代日本人からすると変な感じもするが、手土産もなしに訪問するのもおかしな話だろう。ちょっと高価な手土産だけれど。
しかし、何を献上品にするかということは、非常に気を使う作業なのよ。異界の文明レベルは、地球で言えばヨーロッパの中世時代くらいか。
“必要は発明の母”とは良く言ったもので、逆に必要がなければ発明する必要もない。それでも、年がら年中魔法に頼っているわけにもいかないし、魔法の能力も向き不向きも個々人で違うためか、油を燃やすランプ程度の発明はされている。同時に、魔石を使った照明も作られているところが、
その他にも、そもそも文明が生まれた年代が、
閑話休題。
そんな訳で、現代日本の技術力を使った製品に対しては、
二ヶ月後に予定していた王都訪問用に用意していた宝飾品を、臨時便で送って貰うことも可能だが、そうすると次回の貢ぎ物に苦労してしまいそうなので、ここはひとつ、村にあるものから出すことにした。
苦労して選んだのは、王に対しては南部鉄器の茶器セット。王妃には江戸切り子のグラスを選んだ。次の訪問用に箱根細工の宝石箱を申請していたが、それは間に合わないようだ。特注品にしちゃったからね。その他にも、ブラックペッパーやハーブなど、
それから、魔導士のみなさん向けに、ノートとボールペンを何セットか。運動会の景品か! と思わないでもないけれど、紙のない
その他、個人的なお土産として、宮中の女性たち向けにクッキーの詰め合わせをいくつかと、生理用品をかき集めた。私や詩をはじめ、村には数十名の女性もいるので、個人で所有しているもののほかに村共有の財産として各種生理用品を補完している。村の男性はあまり知らないことだが、
今回の王都行きは、私と村代表の詩、巳谷先生、迫田さんとその部下二名、科学部門から数名が参加する予定。問題は護衛だなぁ。王都までの経路には
そう。
そもそも、なぜ
そんなことを考えていたら、ふと違和感を覚えた。――失敗して地面に大きなクレーターを作ってしまった、御厨教授の実験。
□□□
上岡一佐からメールが届いた。警備シフトの見直しプランだ。これによると、王都訪問に同行する陸上自衛隊員は、田山三等陸佐、日野二等陸尉、横井一等陸曹の三名だ。日野二尉がメンバーに入っていて少し安心した。彼女は、私より少しだけ年上だけど、話も合うしなにより女性に守って貰う方が、何かと、ねぇ。あ、田山三佐も同年配だったはず。あんまり話したことはないけど。
上岡一佐は、王都訪問チームの警護計画も作ってくれた。これによると武装は(村の警護時にも使っている)テーザー銃に、特別な改造を加えたガスライフル。そして、ヴェルセン王国の剣を模して作られた剣。ふうん、剣ねぇ。いくら自衛隊員だからといって、さすがに剣の練習はしていないと思うから、むしろ日本刀の方がいいと思うけど。おそらくは、防衛省の判断ね。
”
現在は、小型のロボットを使って、メッセージのやりとりを行っている状態だ。上岡一佐も、王都からの呼び出しがあったことを、すぐに政府へ伝えたのだろう。あんまり細かいことは言いたくないけれど、私をすっとばされるのは困るなぁ。
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