第2話 真っ赤なウソ
「奴隷番号58番。参りました。」
いつも通り、蒼が浮かべるであろう表情で、蒼が言うであろう口調で、蒼がするような動きで、紅は看守長室へと足を踏み入れた。
看守長の為の特別な部屋というだけあって、さぞかし豪華絢爛なんだろうと紅は期待すらしていたのだが、それは大きく裏切られることになった。
広さこそあったものの、いわゆる娯楽に使われるであろうものは一切存在せず、あるのは棚と机と椅子だけというめちゃくちゃシンプルな部屋だったのだ。
(うわぁ……)
表情こそ変えなかったが、イメージとのギャップに引いた。これ以上ないほどにドン引きした。
ただでさえ、「貴族様のくせに戦闘奴隷宿舎の看守長をしているドSイケメン」という変態チックな肩書を持っているというのに、部屋に娯楽の類(テレビだったり、ラジオだったり、趣味の本だったり)がないとなると、もうきっとこれは奴隷いじめが趣味な変態に違いない。うん、きっとそうだ。
呼び出された時点で嫌な予感はしていたが、権力のある変態(と噂の人物)と部屋に二人きりというのは、つまりナニをされても一切の逃げ場はないということで……。
本格的に身の危険を感じ始めた紅は、下手な言い訳を並べるより素直に謝ることにした。
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