紅ノ戦士

かなかな

第1話 ブルーな気分

15時過ぎの自由時間、いつもはのんびりと過ごせるはずの時間に、紅は渋い顔でとある場所へと向かっていた。


この施設内で最も奥にあり、最も頑丈にできており、最も権限のある者の部屋―――つまり看守長室だ。


呼び出された理由に心当たりがないわけではなかった。


2日に1本ペースで破損していた模擬戦用の模造刀を、昨日は2本、折ってしまったのだ。


新品のように見えたが、おそらく他の者が使って消耗していたものを立て続けに引き当ててしまったのだろうと、紅は踏んでいた。


そうでなければ、たかだか打ち込み1000回くらいでおれるわけがない。


あぁ、運が悪い。とても、運が悪い。


なぜ真面目に訓練している俺が呼び出されて、サボってるアイツらがお咎め無しなんだ。


どうせ備品管理してるヤツもテキトーにやってっから、俺がこんな目に会うんだ。


あぁ、もうクソめんどくせぇし、さっさと終わらせて部屋に戻ろう。


紅は、看守長室の扉の前に立つと、だらけた表情を一瞬で引き締めノックした。


トントントンと少し鈍い音の後、すぐに返事がなかったので心の中でガッツポーズをしかけ……。


「入れ」


やはり、今日はとても運が悪いようだった。

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