第35話「真田信繁と十勇士」
「む、皆の衆、まだじゃ!」
果心居士が叫んだ時
「こ、これで終わりではない」
第六天魔王はその実体を現した。
禍々しく黒い気の塊、それこそ大妖魔でもある第六天魔王の真の姿であった。
「うわ、さっきより強い気を放ってる!」
「ああ、だが何か不安定な気がするが?」
たけぞうと彦右衛門がそう言うと
「これはおそらくだが、奴は何かに憑いていないと力を制御できないのでは?」
龍之介がそう言った時
「こうなったら我の力全てを解放し、世界を一気に消し去ってくれるわ!」
第六天魔王がそう叫んだ。
「何だって!? そ、そんな事したらお前達妖魔だって!?」
「もう貴様等を道連れにできればそれでいいわ!」
第六天魔王はそう言って大きな気の塊を放つ。
それはどこかへ飛んで行ったかと思った時、凄まじい地響きが起こった。
「な、何だいったい!?」
たけぞうが叫ぶと
「世界の中枢を突いてやった。この調子だとあと四半刻程で世界は消えるであろう……先に地獄に行って待ってるぞ、フハハハ……」
第六天魔王は笑いながら消えていった。
その後も地響きは続く。
「果心居士さん! これどうにかできないの!?」
「儂でもこれを抑えるのは無理じゃ。せめてここに神器でもあればなんとかなるやもしれんが」
「よく分かんないけど、どうする事もできないの?」
「すまん、いい手が浮かばん」
果心居士は項垂れて言った。
「く、私が油断してなければこのような事には」
秀頼が悔やんでいると
「いえ秀頼様、奴はたとえ貴方様に憑けなかったとしても他の誰かに憑いていました。それとこう言ってはなんですが貴方様に憑いた事で真田信繁様と十勇士が再び現世に来られ、皆様が我らを助け教え導いてくれました。それがなければ第六天魔王は倒せませんでした」
三郎が秀頼を慰めるように言った。
「……そういう考え方もあるのか。しかし、どうすればいいのか」
「なあ、今こそあれをやる時だな」
「佐助、今ここにいるのは殿とお前と私の三人だけだぞ。それでは」
才蔵と佐助が話していると
「いや、このまま座して世界が消えるのを待つよりは。たとえ私が……とも」
信繁が二人にそう言った。
「わかりました。殿、俺達はどこへでもお供しますよ」
「それが極楽でも地獄でもない、無の世界であったとしても」
「佐助、才蔵……ありがとう。では行こうか」
「「はっ!」」
佐助、才蔵が信繁の両脇に立ち、目を閉じると、信繁が持つ槍が光り輝きだした。
「あれはまさか? や、やめるんじゃ! そんな事をしたらお主達は!」
果心居士が信繁達に向かって叫んだが、返事はなかった。
「え、あれって何なのさ!?」
たけぞうが尋ねる。
「あれはな、魂の力を使って悪しきものを消し去る霊界の究極奥義じゃ。だがあれを使ったものは下手をすると魂が消えてしまうのじゃ」
「え、それって」
「もしや、二度と生まれ変わる事ができないのでは?」
たけぞうと彦右衛門が尋ねると
「そうじゃ、だから止めないといかん!」
「わかった! 信繁さんやめて!」
「信繁公!」
「信繁やめるんだ! 私の言う事が聞けんのか!」
たけぞう達や秀頼が叫んだがやはり返事はなかった。
「効いてくれよ、俺達の全身全霊を込めたものよ」
「犬死になどするものか、絶対に私達が収める」
「そして未来を生きる者達を守る」
信繁達がそう言った時、どこからともなく八つの光が飛んできた。
「あ、あれはもしや」
「皆、まだ帰ってなかったんだな」
才蔵と佐助がそれを見て言った。
そしてその光が信繁の周りに集まる。
「三好清海、三好伊佐、海野六郎、望月六郎、穴山小助、由利鎌之介、筧十蔵、根津甚八、霧隠才蔵、猿飛佐助……行くぞ!」
おおーー!
信繁と十勇士は雄たけびを上げた後、一つの光の矢となり、遥か彼方へと飛んで行った。
そして……遠くで爆音が聞こえた時、地響きは止まった。
「あ、もしかして信繁さん達が?」
「そのようじゃな」
「うう、信繁……皆」
心配ないよ、信繁さん達は僕が助けたから。
「え? だ、誰?」
たけぞうが声がした方を向くそこにいたのは、黒い洋服を着た少年ヒトシであった。
「え、ねえあんた、本当に信繁さん達は助かったの?」
「うん。そしてね、僕がここへ来た本当の理由はこれだったんだよ」
「で、ではお主、こうなる事がわかっていて?」
彦右衛門が驚きながら尋ねる。
「そうだよ。僕にはあれを止めるのは無理だけど、信繁さん達を助ける事はなんとか出来そうだったのでね」
「そうか、それで信繁公や十勇士の皆様方は何処に?」
「無事にというのは変かもしれないけど、皆さんはあの世へ帰ったよ」
ヒトシは上を指さしながら言った。
「あ、あの、何故あなたはこうなる事を知っていたのですか?」
今度は三郎が尋ねると
「ん~、神のお告げを聞いたから、だと思っててよ」
「は、はあ?」
「まあ深く考えないで。じゃあまたね~」
そう言ってヒトシは姿を消した。
「あの方はいったい?」
「神仏でも仙人でも妖怪でも、そして人間でもないのは確かじゃ。まあご本人が言うとおり、深く考えない事じゃな」
果心居士が三郎にそう言った。
「とにかくこれで終わったね、皆で勝鬨あげようよ!」
「ああ、ではたけぞう殿、頼むぞ」
「うん! えい、えい」
おおおーーー!
たけぞう達は腕を高く上げて勝鬨をあげた。
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