第33話「未来を塞ぐものを吹き飛ばす」

 その後たけぞう達は向かってくる敵を倒しながら先へ進んだ。


 そしてたどり着いた場所には、二十尺はありそうな大きな門があった。


「この向こうに第六天魔王が」

「そうだろうな。敵はいないようだし、これを開けるとするか」

 

「待って皆、何かの気配が!」

 たけぞうがそう言った時


「……ここは通さんぞ」


 なんと門に赤く吊り上がった目と牙が生えた口が現れた。


「な、なんだあいつは!?」

「おそらく門そのものに妖魔が憑いてるのじゃろう。言うなれば妖魔門か。あれは手強そうだぞ」

 果心居士が門を見ながら言った。


「あんなの俺の術で、オンキリキリバサラ……大火竜の術!」

「なら拙者も、鳳凰一文字斬!」

 佐助と彦右衛門の技が音を立てて妖魔門に炸裂したが

「なんだそれは?」

 妖魔門には傷一つついていなかった。

「え、俺達の攻撃が効かない!」

「な、なんという硬さだ」


「ならワシが、どすこーい!」

 志賀之助が妖魔門に体当たりしたが、やはり扉は開かなかった。

「無駄だ、どれ」

 妖魔門はそう言って大きな口を開き、長い舌を伸ばして志賀之助を捕まえた。

「ぬおお!?」

「まずお前から食ってやろう」


「させるか! 行くぞ傳右衛門!」

「はい!」

 筧十蔵と傳右衛門はそれぞれ鉄砲を構え、妖魔門の目に狙いを定め、引き金を引いた。

「ぬ!?」

 妖魔門が弾が当たらぬよう、目を瞑った時

「てりゃあ!」

「はあっ!」

 その隙を逃さず、穴山小助と龍之介がそれぞれの槍で妖魔門の舌を突き刺す。

「うぎゃ!」

 さすがに舌までは頑丈ではなかったようで、妖魔門は痛みのあまり志賀之助を離した。

「す、すまんでごんす」

「気にするな、これで全く攻撃が効かないわけではないとわかったのだから」

 龍之介はそう言ったが

「だが同じ手は通用しないだろうな。さてどうしたもんか」

 根津甚八が身構えながら考えていると

「どうやら出し惜しみしてる場合じゃないな、あれを使おう」

 望月六郎が前に出た。

「あれ? ああ、あれか。でも今持ってねえだろ?」

 甚八がそう言うと

「材料があればすぐに作れる。佐助と果心居士殿なら出せるだろ?」

「ああ、任せとけ」

「この世にあるものなら出せるぞ。言うてくれ」

「よし、じゃあ出来るまで私が足止めしておこう」

 由利鎌之介が前に出ると

「おい、一人じゃしんどいだろ。俺達も行こう」

 甚八、筧十蔵、穴山小助も鎌之助の後に続いた。


「では……とりゃあ!」

 鎌之助は手にしていた鎖を大渦のように振り回し始める。


「ぬ? め、目が」

 妖魔門が目を回した時


「そりゃああ!」

「はあっ!」

 甚八と小助が飛び上がり剣で、槍で妖魔門の両目を突き刺した。

「ギャアアアアア!」


「おお! 流石は十勇士!」

「だがあれでも門は開かん。どうする気なんだ?」

 彦右衛門と龍之介が話していると


「そりゃっ! はっ!」

 十蔵が鉄砲を連続で撃つと、妖魔門の口の上辺りに小さなヒビができた。

「傳右衛門から分けてもらった妖魔消滅弾でもあの程度か。だがこれで」

「ああ、これで奴を」

 六郎が十蔵の側に来て言った。

 鎌之助、小助、甚八もそこに集まり

「お、早かったな」

 甚八がそう言うと六郎は

「果心居士殿が材料だけじゃなく良い道具も出してくれたおかげでな。さ、とどめといくか」

「ああ、では……おい皆、危ないから伏せろ!」

 甚八が全員に向かって叫んだ。

「え、うん!」

 たけぞう達は言われたとおりその場に伏せた。


 それを見た六郎は手にしていたもの、六文銭の印が入った黒い玉を十蔵がつけたヒビ目掛けて投げつけた。

 そしてそれが当たると、凄まじい轟音と共に大爆発が起こった。

「ウギャアアアアア------!?」


 やがて砂塵が晴れ……妖魔門は木っ端微塵になっていて、そこには大きな黒い穴が開いていた。


「よし、上出来だ!」

 六郎が握り拳を作って叫ぶと

「上出来どころか最高の出来だろ? 前に見た時より凄えじゃねえかよ」

 甚八は呆れながらそう言った。


「な、何アレ?」

 たけぞうは何が起こった? というふうに呟いた。

「爆弾のようですが、あんな威力の物は日ノ本どころか南蛮にもないかと」

 三郎がそう言うと佐助が答えた。

「あの超爆弾はさ、六郎があの世で研究に研究を重ねて開発したものだよ」

「あ、あの世で? あの、それで何をしようと?」

「それはね、いつかまたこの世に未来への道を塞ぐ悪しきものが現れた時、何らかの形で現世に超爆弾の製造法を伝え、それを吹き飛ばしてもらおうとしてたんだよ。まあ今回は自分でやっちゃったけどな」

 それを聞いた三郎は、目を潤ませながら六郎の背を見つめた。 




「さてと、皆は先に行ってくれ。俺達は少し休んでから行くから」

 六郎がたけぞう達に向かって言った。

「う、うんわかったよ」

「六郎、甚八、鎌之助、小助、十蔵」

 信繁が彼らに近寄ると、六郎は小声で主君に話しかけた。

「必ず秀頼公を、我らは」

「すまん、後は頼む。さあ皆、行こう!」

「おお!」

 たけぞう達や信繁達は先に進んでいった。



「ご武運を」

「おい皆、おいでなすったようだぞ」

「ああ」

 六郎達が後ろを振り返ると


 オオオ……。


 そこには異形の化け物達がいた。数は万、いや十万は下らぬであろう。


「さっきまでのとは違って一匹一匹が強そうだ。さて皆、どうする?」

 望月六郎が他の者に向かって言うと、

「どうするって? そうだな、ひとつ競争と行こうか」

 由利鎌之助が、

「誰が一番多くをか。面白そうだな」

 穴山小助が、

「ふふ、俺は一発で数十人は倒せるぞ」

 筧十蔵が、

「俺は本来海戦や作戦指揮が得意なんだがなあ。だが負けねえぞ」

 根津甚八がそれぞれ語った。


「ああ、では行くか」

「おお!」


 五人は化け物達に向かって突撃していった。

 主君を、仲間を、そして未来へ進む者達を守る為に。

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