第30話「日ノ本一の兵 対 河童の武士」
いよいよたけぞうと真田信繁の戦いが始まった。
信繁は勢い良く自身の武器、朱色の十文字槍をたけぞうに向けて突き出す。
「わっ!?」
たけぞうはそれを素早くかわし、剣を構え信繁に打ち掛かろうとしたが、その槍で弾かれた。
「そりゃあ!」
そして信繁が目にも留まらぬ早さで幾度も槍を突き出す。
たけぞうはそれをなんとか避けていたが
「はっ!」
「うわあっ!?」
槍がたけぞうの脇腹をかすった。
「や、やはり日ノ本一の兵と呼ばれるだけあって強い、桁違いに」
三郎が信繁の強さに驚いていた。
「あの腕前、先程の穴山小助以上だ。私では到底勝てん」
龍之介は信繁を見て震えていた。
「しかしあの人達、何の為に戦ってるのでしょう?」
ジャンヌが誰にともなく問いかけるように言うと
「それはこの勝負が終わればわかるじゃろう」
果心居士がそう答えた。
「ぐ、どうしよ?」
たけぞうは険しい顔で呟いた。
「殿もさらに強くなられてる。最後の勝負は殿が」
才蔵が信繁の勝ちを確信するが、
「いや、あのたけぞうという男、まだ秘めた力があるぞ」
佐助が首を横に振り、自身の術で見たたけぞうの事を話す。
「な、なんだと? それは本当か?」
「ああ。この勝負、どっちが勝つかわかんないぞ」
「よし、まだちょっとしんどいけど、全力を尽くさないと悪いよね」
たけぞうはそう言って懐から翡翠の人形を取り出した。
そしてそれを高く掲げると、たけぞうの体が強く光り輝きだした。
「な、なんだあれは!?」
「あ、あれがなのか!」
両軍共それを見て驚き叫ぶ。
そして光が収まると、そこには金色の髪、緑色の肌、背には甲羅、頭には皿があってやたら美形の河童がいた。
「ふう、この姿も久しぶりだよな」
たけぞうが自分の体を見て呟く。
「たけぞう、河童に戻ったのか?」
「うん、一時的だけどね」
たけぞうは振り返って彦右衛門に答えた。
「お前には何か秘めた力があるように感じていたが、まさか河童だとはな」
信繁が口元を歪めながら言う。
「そうだよ、それじゃ」
たけぞうは両手に剣を持ち、右へ左へと動きながら素早く信繁に打ち掛かる。
「うりゃああ!」
「はっ!」
信繁はたけぞうが右腕で振り下ろした剣を槍先で弾いた。が
「てりゃあ!」
たけぞうは体をさばいて信繁の右側に回り込み、左腕の剣を信繁の頭上目掛けて振り下ろす。
「くっ!」
信繁はそれを甲冑をつけた腕で弾き、後退して間合いを取る。
「そりゃあ!」
そして槍をたけぞうに叩きつけるかのように振りかざす。
だがたけぞうはそれを二本の剣を交差させて受け止めた。
その体勢のまましばらくどちらも動かない、いや動けないでいた。
しばらくして
「ぎぎ……はっ!」
たけぞうが素早く後ろに下がると、信繁の体勢が崩れる。
そしてその隙を見逃さず斬りかかろうとしたが、信繁はとっさにたけぞうの腹に頭突きを食らわせ、それを防いだ。
その後互いの剣と槍の打ち合う音が続いた。
「す、凄いでごんすな」
「うん、おいらじゃ勝てないチュー」
志賀之助と鼠之助は二人が桁違いの強さである事に驚いていた。
「な、な? あいつ、あんなに強かったのかよ!」
佐助もたけぞうの強さが自身の術で見えた以上であった事に驚いていた。
「だが、それで殿が熱くなっておられるな」
才蔵は信繁が戦いを楽しんでいる、と思って呟いた。
やがて……。
「ぜえ、ぜえ。やべ、そろそろ時間が」
「次で決める、これ以上時間はかけられん」
そして両者共に間合いを取り
「はあっ!」
信繁は槍を構え、弾丸の如くたけぞうに突進していく。
それに対し、たけぞうは右の剣を上段に構え、左の剣を中断に構え
「やあっ!」
突進してきた信繁の槍を左の剣で弾き、右の剣で首筋目掛けて振り下ろした。
「!?」
そしてその剣は間一髪で止まった。
「どう?」
たけぞうが問うと
「……見事だ。私の負けだ」
信繁が答えた。
「あ……や、やったー!」
三郎や彦右衛門達が喜び叫んだ。
「佐助、彼らなら我々と共に」
「ああ、そうだな」
「ねえ信繁さん、あんた達の本当の目的ってなんなの?」
人間の姿に戻ったたけぞうが信繁に尋ねた。
「……我々があえて世界を滅ぼす攻め手となったのは」
「悪しき縁に囚われ、大妖魔と化したあの方を救う手がかりを探す為じゃろ?」
たけぞうの後ろにやってきた果心居士が言った。
見ると両軍それぞれたけぞう、信繁の後ろに立っていた。
「流石果心居士殿、お見通しだったか」
「いや、儂の力ではない。文車妖妃殿から聞いていたのじゃ」
「そうだったの? 文車妖妃さんもわかってたなら言ってくれたらよかったのに」
たけぞうが言うと
「いや、お前さん達と出会った時にはまだ確証がなかったと言っとった」
「そうでしたか。それで信繁殿、果心居士殿。あの方とはいったい?」
三郎が尋ねるが、信繁は沈黙していた。
「信繁殿、言い辛いなら儂が言おうか?」
「いや、自分で言う。あの方とは……
「えええ!?」
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