第26話「怪力兄弟と息のあった相棒同士」

「うりゃああ!」

「どすこーい!」

 清海入道と志賀之助ががっぷり四つに組み、力比べとなった。

「ぐっ……」

「おりゃあ!」

 志賀之助が清海入道を上手投げで投げ飛ばした。


 

「そりゃあ!」

 伊佐入道が棍棒を振るが、鼠之助がそれを素早く避けて反撃していた。

 そして

「あちゅー!」

 鼠之助の蹴りが伊佐入道の腹に決まった。

「ぐっ、この鼠妖怪、想像以上に強い!」

「それは光栄だチュー!」



「おお、一対一ならこちらが有利のようだが」

 彦右衛門が言うと、

「二人が連携すればわからんぞ」

 果心居士がそう続けた。


 そして龍之介は何故か冷や汗をかき、たけぞうを見ていた。

「ん? どったの?」

 たけぞうが龍之介の視線に気づいて尋ねる。

「……たけぞう殿、何故そんな状況になっている?」

「あ~、何かこうされたくなってさ」

 たけぞうは何故か黒い洋服を着た少年にお姫様抱っこされていた。


「……そうか。ところで何故あなたがここにいるのだ?」

 龍之介がその少年に話しかける。

 どうやら彼とは顔見知りのようだ。

「ん~? 別にいいじゃんか、キャハハ~。さて、もういい?」

 少年がたけぞうに尋ねると

「ん、ありがと」

 たけぞうは笑顔で少年の腕から下りた。

「よかった。それじゃあね~」

 少年はそう言って消えた。


「彼はいったい何をしに来たのだ?」

 龍之介は顔に縦線を走らせていた。

「何か用があるって言ってたよ。教えてくれなかったけど」

 たけぞうは首を傾げた。




「何か意味不明な光景が見えたぞ、おい」

「殿。それは置いといて勝負を見ましょう」

 信繁と佐助も顔に縦線を走らせていた。




「どうした? 真田十勇士の実力はこんなもんではないはずでごんす」

 志賀之助がそう言うと

「おお、なら見せてやろう。行くぞ伊佐!」

「おお、兄者! そりゃあ!」


 伊佐入道が気合を入れ、持っていた得物を地面に叩きつける。


 すると志賀之助と鼠之助の足元のみが大きく揺れた。

「おおっ!?」

「チュー!」

 二人が足元に気を取られると

「隙あり!」

 清海入道が持っていた金棒で二人を殴りつけた。


「ぐお、これは効いたでごんす」

「痛いチュー!」

 そう言ってはいるが致命傷にはなってなかった。


「やはりこのくらいでは倒れんか。伊佐、続けていくぞ!」

「おお兄者、おりゃあ!」

 そこから清海入道、伊佐入道のどちらかが地面を揺らしてはもう一人が攻撃、を繰り返した。


 そして志賀之助と鼠之助はボロボロになりながらも立っていた。

 二人共その目から闘志は失われていない。


「まだ倒れんか。しかしこれで充分か」

「それはダメだ。殺さないにしてもせめて気を失わせないと」

 清海入道と伊佐入道は小声で何か話していた。



「ぐう、何かいい手はないでごんすか」

「志賀之助さん、おいらに考えがあるんだけど」

「ん? 何かあるでごんすか?」

「うん、あのね……」

「なるほど! やってみる価値はあるでごんす」

「そしておいらを……ね」

「おお! では」

「うん!」

 鼠之助は志賀之助の肩に飛び乗った。


「ん、何をする気だ? まあいい、とどめだ! 二人同時に行くぞ!」

「おお!」

 清海、伊佐入道が同時に地面に得物を叩きつけると、先程よりも大きな揺れが起こった。


 その時、

「よいしょおーーー!」

 志賀之助が大きな掛け声と共に力いっぱい四股を踏む。

 すると大揺れがその力に相殺されて収まった。


「な!?」

 清海、伊佐入道はそれを見て怯んでしまった。


「よし、行くぞ!」

「うん!」

 鼠之助が志賀之助の肩から大きく飛び跳ねた。

 そして志賀之助の前まで落ちてくると


「どすこーい!」

 志賀之助は鼠之助の足の裏目掛けて渾身の張り手を打った。そして

「あちゅーーーー!」

 鼠之助は勢いよく清海、伊佐入道の方へ飛んでいき、伊佐入道に頭突きを食らわせた後、その反動で清海入道にも頭突きを喰らわせた。


「ぐおおお!?」

 二人が頭を押さえながら片膝をつくと

「うりゃああ!」

 志賀之助が突進して行き、二人を両腕で担ぎ上げ

「そりゃあ! せえええい!」

 二人を城の方へ思いっきり投げ飛ばす。


 ドガッ!

 ドガッ!


 清海入道、伊佐入道は城壁にめり込んでしまった。



「勝負あり、だな」

 果心居士が呟いた。


「よっしゃあ!」

「やったチュー!」

 志賀之助は鼠之助を肩に乗せて喜んでいた。




「あの二人は会って間がないはずなのに」

「まるで長年の相棒のようだな」

 佐助と信繁は志賀之助と鼠之助を見て感心していた。

「俺達と同じく、あいつらも固い絆で結ばれてるんでしょう。年月は関係なく」

 そう言ったのは逆立つやや茶色がかった髪、派手な色の甲冑を身にまとい手には種子島銃を持った男だった。

「次はお前が行くか」

「はい。この筧十蔵かけいじゅうぞうが。しかし殺さないように勝負となると」

「十蔵、あちらにも鉄砲使いがいるぞ、だから」

 佐助が十蔵にあることを言った。

「なるほどな、よし、それで行くわ」




「お、次は筧十蔵か、彼は鉄砲の名手だぞ。となるとこちらは傳右衛門殿がいいかと」

 果心居士がそう言うと

「拙者はあまり喋ってないから存在忘れられてるかと思いましたよ。わかりました」

 稲富傳右衛門が前に出た。


「落ち着いてな。お前は緊張さえしなければ日ノ本一の鉄砲使いなんだから」

 三郎が傳右衛門にそう言った。

「わかってますよ。では」



 稲富傳右衛門と筧十蔵の一戦は、はたして?

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