第25話「鎖と二刀流」

 鎌之助が先に動き、持っていた大鎖鎌の鎖分銅を頭上で振り回し始める。

 それに対し一学は二本の刀を両手に構える。


「うーん、あの鎖を一学さんの刀、もしくは体に巻きつけ……でもそのくらいは読めるよね?」

 たけぞうがそう言うと


「はあっ!」

 その鎖がまるで大蛇の如く一学に迫っていき、目にも留まらぬ早さで一学の体を打ちつけていった。


「鎖で攻撃だと!?」

 彦右衛門が驚いて叫んだ。

「ほう、そう来たか」

 果心居士は感心して頷いていた。


 その後も鎌之助の鎖が一学を打ち続けるが、彼はそれを受けてなお立っていた。


「どうした? 反撃してこないのか?」

 そう言って鎌之助がさらに鎖を放つと

「……見切った!」

 一学はその場で迫り来る鎖を両の刀で撃ち落とし、そのまま鎌之助に向かって突進していった。

 だが

「甘い!」

 鎌之助は素早く鎖を操り、それを一学の左腕に絡みつけ、そして

「そりゃあ!」

 鎌之助が一学を引き寄せようとしたが、一学はなんとか踏ん張った。


「ぐ、結構力あるな、この男」

 鎌之助がそう言った時

「はっ!」

 一学が力を抜いたかと思うと、その勢いで鎌之助に突進していった。

「なっ!?」

 そして一学は右手に持っていた刀の柄を鎌之助のみぞおちに喰らわせた。


「ぐ、が」

 鎌之助はその場に蹲った。


「まだやりますか?」

 一学が鎌之助にそう言うと

「いや、降参だ。強いねあんた」

 鎌之助は一学を見上げてそう言った。


「いえ、あなたはまだ本気出してなかったですよね?」

「何を言ってる? 私は本気だったぞ」

「いや、あなたからは本当の殺気が感じられなかった。ですので次の機会があれば、本気で手合わせしてください」

「……なんとなく察してくれてるようだな。わかったよ」

 そう言って二人共それぞれ下がっていった。




「彼等ならば、本当に」

 信繁はたけぞう達を見て感心していた。

「殿、次はワシらが」

「兄弟二人で」

 そう言ったのは僧兵のような坊主頭の二人の大男

「清海、伊佐か。わかった」

 三好清海入道と三好伊佐入道の兄弟だった。




「次は三好清海と伊佐が兄弟二人で出てきたぞ」

 果心居士がそう言うと

「怪力無双の兄弟。ならワシの出番でごんすな」

 志賀之助が前に出た。

「でも向こうは二人だよ。もう一人誰かいないと」

 たけぞうがそう言うと

「ならおいらが一緒に行くチュー」

 鼠之助も前に出た。

「おお、鼠之助がいてくれたら百人力でごんす」

「ありがとだチュー」



 そして

「お主が日下開山とか呼ばれてる男か。なかなかの面構えだ」

「そっちのネズミの妖怪も見た目に似合わず強そうだな」

 清海と伊佐が続けて言う。

「それは光栄でごんすな。では」

「よーし、やるチュー」


 明石志賀之助・鼠之助と三好清海入道・伊佐入道の戦いが始まった。

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