第24話「霧に隠れし忍に対するは闇を切り裂く侍」
そこにいたのは赤い鎧に陣羽織を身に纏った日ノ本一の強者、真田信繁。
顔立ちは涼やかに見えるが、その身から発する闘気は凄まじいものだった。
「あ、あれが……聞きしに勝るとはこの事だね」
たけぞうは信繁を見て身震いした。
「ああ、それに十勇士も」
彦右衛門は信繁の後ろにいた十勇士を見た。
佐助が言ったとおり、皆それぞれ最も強かったか思い入れのある姿になっていた。
「殿、彼等を連れてきました」
佐助が信繁の前で跪いて言った。
「ご苦労だったな。お前の言うとおり彼等なら」
「ええ、その為にここへ。ここなら何も気にせず戦えますから」
「のう信繁殿。先程佐助殿が言っとったが、まずは一対一で戦うか?」
果心居士が信繁に尋ねた。
「そうだな。ではこちらは」
「殿、ここは私が」
そう言ったのは黒い忍者服に身を包んだ男。
「才蔵、お前がいきなり出てどうする」
「殿、私と佐助以外の十勇士はまだ完全に力を取り戻してません。このままでもなんとかなるとは思いますが、それでは彼等に失礼でしょう。ですからまず私が」
才蔵はそう言った。
「そうだな。わかった、では頼む」
「はっ。では」
才蔵が前に出た。
「お、向こうは霧隠才蔵が出てきたな。彼は」
果心居士が才蔵について皆に説明した。
一行の中には才蔵の事がわからないものもいるので。
「ではまず拙者が」
そう言ったのは三郎だった。
「三郎さん、あいつ強そうだから気をつけてね」
たけぞうが三郎にそう言った。
「はい。では行ってきます」
そして
「拙者は対妖魔隠密頭領、岡崎三郎」
「真田十勇士が一人、霧隠才蔵」
互いに名乗りを上げ、戦いが始まった。
「はっ!」
両者共に素早く剣を抜いて相手に向かっていく。
その剣が音を立てて交差しては間合いをとる、を幾度も繰り返した。
「すげ、前より更に強くなってる」
たけぞうは三郎の動きを見て身震いした。
「さすが信康殿の子孫なだけの事はあるな。しかしよう似ている」
「ん? 果心居士殿は信康公にお会いになったことが?」
彦右衛門が果心居士に尋ねた。
「会ったどころかな、儂はかつて信康殿と共に戦乱の世に現れた最強の妖魔と戦ったんじゃ」
「な、なんと?」
「そしていつかまたこの世を滅ぼそうとするものが現れたら、信康殿の子孫と共に戦おうと決めとったんじゃ」
「では果心居士殿は全て知っていて、それで仙人になられたと」
「まあ、それより勝負を見ようではないか」
「どうやら剣技だけでは敵わんようだ。では」
才蔵はそう言って何やら呪文を唱えだした。
すると才蔵の体から霧が吹き出して辺り一面を覆った。
「なっ!?」
その霧のせいで三郎は才蔵がどこにいるかわからなくなった。
「く、どこにいる?」
三郎が辺りを見渡していると
「ここだ」
才蔵が後ろから斬りかかってきた。
「うっ!?」
三郎は素早くそれをかわして才蔵に斬りかかった。
だが才蔵もまたそれをかわして再び霧の中へ消えた。
「霧のせいか気配も感じられん。くっ」
そして三郎は幾度もどこからともなく現れる才蔵の攻撃を防ぎながら、反撃の機会を伺っていた。
「あのままじゃいずれ……そうだわ」
ジャンヌが一歩前に出た。
「ん? 助太刀するの? ならこっちも」
どこからともなく佐助の声が聞こえた。
「手は出さないけど、助言くらいはいいでしょ?」
ジャンヌは武器を置いて言った。
「ん~、まあそれならいいや」
佐助はそれを了承した。
「三郎さん! 気を抑えて、相手の攻撃をわざと受けて!」
ジャンヌは大声でそう叫んだ。
「え……? あ、そう言う事か、よし」
三郎は構えを解いてその場に立ち尽くした。
そしてどのくらい経ったか……。
「はあっ!」
霧の中から現れた才蔵が三郎を斬りつけたが、三郎はそれを紙一重でかわし
「てりゃああ!」
素早く剣を構え、才蔵の脇腹に峰打ちをくらわせた。
「う、が?」
才蔵は予想外の攻撃に虚を突かれ、防御出来ずに倒れた。
「この勝負、三郎殿の勝ちじゃな」
果心居士がそう言うと
「よっしゃぁ~!」
たけぞうは飛び上がって叫んだ。
「ぐ、何故峰打ちに? ここで私を殺さないと」
才蔵が倒れたまま三郎に尋ねると
「いえ、おそらく貴方達は拙者達を」
「察してくれたか。だが」
才蔵は小声で言うと
「はい。いずれ言える時が来るまで言いません」
三郎も小声でそう言った。
「佐助、才蔵を連れて帰ってきてくれ」
信繁が佐助に命じた。
「わかりました。そして次は」
「次は私が行きましょう」
そう言ったのは鎖鎌を持った美形の男だった。
「あ、カマ野郎も力が戻ったのか」
佐助がからかうように言った。
「誰がカマ野郎だ! 私の名は
「わかってるよ。あいつら皆強いから気をつけろよ」
「ああ。誰が相手でもいい勝負ができそうだな」
そう言って鎌之助が前に出ていった。
「ほう、次は由利鎌之助か」
「皆さん、次はそれがしが出てよろしいか?」
そう言ったのは清水一学だった。
「一学殿の二刀流なら鎌之助の技に対抗できるじゃろう、儂は異論はないが皆は?」
「うん、いいよ」
たけぞうや他の者も頷いた。
「では行ってまいります」
一学も前に出ていった。
そして
「吉良家家臣、清水一学義久」
「真田十勇士が一人、由利鎌之助」
二人が名乗りを上げたと同時に、新たな戦いが始まった。
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