第17話「記憶を無くした聖女?」
「え、この人って南蛮人?」
「そのようだな」
「ジャンヌ・ダルクって……え!?」
三郎は思い当たるフシがあったようて、思わず叫んだ。
「三郎さん、この人知ってるの?」
たけぞうが三郎に尋ねる。
「あ、いえ以前長崎で知己を得た南蛮人に聞いたことがあるのですが、とある国で英雄と崇められている軍人で聖女の名前がたしか、でも」
「でも?」
「その方は約二百年前に亡くなられた。だから同姓同名の別人ですよね」
三郎がそう言うと、
「実はの、このジャンヌは自分の名前以外記憶がないのだ」
法眼はジャンヌを見てそう言った。
「え? そうなのですか?」
「ああ、数ヶ月前うちに来た時からな。自分がどこに住んでいたか、どうやってここに来たのかまるで覚えとらんかった」
「そうだったんだ。じゃあもしかして本人かも?」
「あの、だから約二百年前の人ですって」
たけぞうの言葉に三郎が突っ込む。
「まあ、彼女には類まれなる戦闘力に軍事指揮能力があるぞ。かの
法眼はかつての愛弟子の名をあげた。
「そ、そんなにですか!?」
三人はそれを聞いて驚いた。
「ああ、いろいろ話したり剣の稽古をしてわかったわ」
「へえ……」
「あの、ジャンヌ殿。ちょっとお聞きしてよろしいですかな?」
彦右衛門はジャンヌの方を見た。
「はい、何でしょう?」
「何故にあなたは日ノ本の言葉を話せるのですか?」
「それはわかりません。私が気づいた時にはこの国の言葉と、おそらく母国の言葉を両方話せてました」
ジャンヌは俯きがちに言った。
「そうですか。あの、その母国の言葉で少し話してみてくれませんか?」
「あ、はい……Pourquoi suis-je ici?」
「うーむ」
「彦右衛門さん、ジャンヌさんが何言ったかわかるの?」
たけぞうが尋ねると
「いや、わからん」
ズゴオッ!
全員がズッコケた。
「ま、まあとにかくジャンヌも連れて行ってやってくれ。もしかすると、旅の途中で何か思い出すかもしれんからな」
法眼はよろけながらそう言った。
「皆さんどうぞよろしくお願いします」
ジャンヌはお辞儀して言った。
「あ、はい。こちらこそ」
「ところで法眼様、他に誰か心当たりありませんか? ジャンヌ殿を加えても四人では少々」
三郎が法眼に尋ねた。
「そうだなあ。あやつなどどうかのう、だが」
「だが何ですか?」
「あやつは今どこにいるかわからんのだ。以前たけぞうが修行を終えて旅に出た後、ここへ来てそれっきりだからな。おお、あやつはかなり力が強いぞ」
「そうでしたか。あの、その方の名前は?」
「
法眼はその男の名を言った。
「明石志賀之助、あの日下開山の力士か」
三郎はその名に思い当たった。
「力士なら江戸にいるのかな?」
たけぞうが言うと
「いや、江戸にいるなら既に見つけてますよ。たぶん諸国を回ってるんでしょう。よし、部下に命じて探させます」
三郎はそう答えた。
「それでもあと六人か。そこらを闇雲に回ってたら、時間がいくらあっても足りんな」
彦右衛門は顎に手を当てて呟いた。
「そうだ。……へ行ってみればどうだ?」
法眼はある場所を言った。
「え、そこにも強者がいるの?」
たけぞうが尋ねるが
「いいや。だが強者の居場所を知ってそうな者がいる」
「へえ、法眼様よりもだなんて。あの、その人って人間? それとも妖怪?」
「それは会えばわかる」
「……まあ、行ってみます」
「そうか。そやつに会ったらよろしく伝えてくれ」
こうしてジャンヌを加えたたけぞう達一行は法眼に教えられた場所へと向かった。
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