第12話「運命の出会い?」

 その後もたけぞうは全国津々浦々を周り、多くの強者と戦い、いろんな人に出会い

技を磨き心を磨いていった。


 そして月日は流れ……



 たけぞうはとある町の食堂で魚を食べていた。

 もうすっかり人間らしくなっているたけぞうだった。

「どうですかお侍様、当店自慢の料理は」

 店の主人が話しかけてきた。

「うん、とても美味いよ。でもこれ、ご禁制の河豚でしょ?」

「シ~、声が大きいですよ。でもうちは毒が無いのが自慢ですから」

「ああ。ごめんなさい」


 そして、

「ふう、ごちそうさま。お代ここに置いとくね」

「ありがとうございました、またのお越しを」

 たけぞうは店を出た。


「あの男只者ではないな」

 出て行ったたけぞうを見つめる一人の侍がいた。


 その後たけぞうは城下町を見物していた。

 しばらくして、たけぞうは立ち止まって振り返った。

「誰だよ? おれの後をつけてきてるのは?」


「気配は消してたはずだが、やはり只者ではないな」

 そう言って物陰から現れたのは、さっきの店でたけぞうを見つめていた侍だった。

 長身で髪が長く、中性的な顔立ちで背に長い剣を背負っていた。

「あんた誰? 何でおれを?」

「すまない、あなたがかなり腕の立つ方に見えたので、様子を見させてもらっていたのだ」

「そんな事ないけどね」

「いや、謙遜しなくていい。あなたからは多くの強者達と戦ってきた気を感じる」

「そうかな。それでどうしたいの?」

「私と勝負してほしい」

 侍はそう言った。

「わかったよ。で、どこでやる?」

「そうだな、ん?」

 侍は何かに気づいた。

「どうしたの? ……あ、なるほど」

 たけぞうもそれに気づいた。

「勝負は後にしよう、今は」

「うん。あ、おれは池免武蔵っていうんだけど、あんたは?」

「私は佐々木小次郎ささきこじろうという者だ」

「へー、あの巌流佐々木小次郎と同じ名前だ」

「……さあ、急ごう」どこかへ走って行った。



「てりゃああ!」


「ハハハ、そんなものが効くか! そりゃあ!」


「うわあー!」


 目的地に着いたたけぞうと小次郎が見たものは

「これは……」

 七尺はあろうかという大きな黒い鬼とその手下達が暴れているところだった。

 既に立ち向かった多くの侍達は倒されていた。

「あいつらもしかして妖魔か?」

「ほう、たけぞう殿も妖魔をご存知なのか」

「うん、まあね」

「そうか。しかし大きなやつは手強そうだが、手下はたいした事なさそうだな」

「じゃあ二人で先に手下達をやっつける?」

「そうするか」



「ん、何だ新手か? おいお前ら、かかれ!」

 黒い鬼の号令で手下達が二人に向かっていったが

「はあっ!」

 たけぞうは素早く二本の刀を右に、左に振り、あっという間に数人を倒した。

「どうだい?」

「やるな、では私も」


 小次郎は背の長剣を抜き、その一振りでこれまた数人を一気に倒した。

「うお、やるね……」

 たけぞうは小次郎の剣筋を見て思った。

 もし戦っても勝てるかどうか。

 そして何故か小次郎とは運命の出会いのような気がした。



「さて、残るはあいつ一人だな」

「そうだね」

 たけぞうと小次郎は手下達を全員倒した。


「おのれよくも! だが俺はこいつらのようにはいかんぞ!」

 黒鬼は二人目掛けて勢い良く金棒を叩きつけてきたが

「よっ!」

「はっ!」

 たけぞうと小次郎はそれをかわした。

「そんなの当たらないよ~だ」

「ならこれならどうだ?」


「え?」

 黒鬼はその図体に相応しくない動きで攻撃し


「ウワアーー!?」

 たけぞうと小次郎を吹き飛ばされた。


「あ、あいつ素早い」

「そのくせ見た目通り、力が強い」

 二人はなんとか立ち上がった。


「ほう、まだ立てるか。なら全力でいくぞ」


「く、下手に斬りつけてもあの早さでは」

「ねえ、おれがあいつの動きを止めるから小次郎さんがとどめを」

「え、止めるってどうやって?」

「まあ見ててよ」


 そう言ってたけぞうは構えを解いて前に出た。

「ん? なんだ、観念したのか? なら死ねい!」

 黒鬼が金棒を振り上げようとしたその時

 

 ドスドスッ!


「が……?」

 たけぞうの二本の剣は黒鬼の右肩と脇腹を刺していた。

「ちょっとうまくいかなかったけどこれで……小次郎さん!」

 たけぞうは黒鬼から素早く離れて叫んだ。

「ああ! そりゃああ!」


 黒鬼は小次郎の長剣で真っ二つになった。



「ふう、勝った」

「しかし強い奴だった。あれは私だけでは勝てなかった」

「それはおれも同じだよ」

「そうか」

「うん」

 たけぞうと小次郎はお互いを讃え合うように頷いた。

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