難題1

01 秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ 我が衣手は 露に濡れつつ

佐藤啓介(さとうけいすけ)の視点 4月30日


キーンコーンカーンコーン…


 6限目終了のチャイムが鳴り響く教室。辺りは楽しそうに会話をしている。

「ねえ、明日Yランド行こー!」

「部活めんどくせー‼」

「明日漢字テストだよー」

 そんな中、俺は1人隅っこにただいるだけ。正直つまらなかった、この学校自体が。

特別頭のいい学校なのではなく「マジー¿」とか、「ウケルーw」とか典型的な馬鹿しかいないこの学校。

 進学校に行きたかったものの、こっから5時間かかるのだから行く方が馬鹿だ。

 

 適当に帰りのHRを終わらせてさっさとこの1-Dから抜け出す。

 こんなつまらない空間に行かなければならないなんて、中学を義務教育にしている政府は頭おかしいんじゃないだろうか?

 そんな下らないことを考えながら帰途に着く。

「なんかおもしれーこと起きねーかなー」

 それが今の単純な願いだった。どんなことでもいい、非日常的なことが起きればいいのだ。

 帰り道は一番楽な時間だずっと1人でいられる。他のやつらは全員部活があって、入ってないのは俺だけだろう。部活は面白味の欠片もないものだった。

運動系が常に大会に出場してるとか、文化系に珍しいものがあるだとかそんなことは一切なかった。ただ単に、動いてるだけそんな印象しかなかった。

 授業もつまらん、部活もつまらん、学校なんかもっとつまらん。このストレスは一体どこで発散すればいいのだろう…

 

 そんなこんなで家についた。そんな文字にして表すほど立派でも、貧弱でもない、普通の家。とりあえず何もかもがつまらないのである。けれども、ちょっと今日は違った。机の上に一通の黒い封筒がおいてあったのだ。

「何だ、これ?」

 裏には赤い字で

『佐藤啓介様へ』とものすごく達筆な字で書かれていた。

「…もしかして、なんかの招待状か!?」

 黒い封筒と言えばやっぱりファンタジーかなんかの招待状に決まっている。

 ワクワクしながら封筒を開けるとそこには

 “定期講習のお知らせ”

「何だ、通ってる塾の通知か…」

 期待を大きく外れていて不満げに続きを読む

 “日時:4月30日

 場所:どこでも

 この手紙を読んでから数十秒後に意識を失います気を付けて…”

 おい…気を付けてって何をすれば…

 そう考えてるうちに目の前が真っ暗になった。








 目を覚ますとそこはひとつの教室だった。

 どこだ、ここ?

 隣に見知らぬ女が座っていた。見た目からして同い年だと思う。

 彼女は眠ったままで、起きる気配がない。

 とりあえずここがどこか知っとかないとな…

 けれども、窓も外から黒い紙が貼られていて見えないし、鍵がかかっていて開かない。ドアも鍵がかかっている。あるのは机と椅子、黒板とか、ここにいるのは俺と眠っている彼女のみ。

「手がかりなんてないのか…」

 いくら非日常が欲しいって言ってもせめて状況は確認させてもらえないとな~。どうすればいいのか全くわからん。

 その時だった、

「あれ、ここはどこ…?」

 眠っていた彼女が目を覚ました。



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