第2話

「色が、汚いねん……?」


 なぜか訛り交じりの告白は、ネロにとって衝撃だったようだ。それこそ、ふだんはインテリな彼が自身の言葉をうしない、イントネーションまでそっくりそのままオウム返しをしてしまうほどに。


「ほら、前も言ったかもだけどさ。ふつう魔法少女ってこうキラキラってしてるもんじゃないですか。変身アイテムは宝石とかコスメとかであるもんじゃないですか。なんかあれさー、色は茶色いしカンテラだし……なんか炭鉱夫みたいですよ」


 率直な感想を述べた瞬間、フードの奥の目がカッと見開いて、ネロは食ってかかった。


「おっめぇー何もわかってねぇ! あれは意図的なデザインなの! スチームパンクなの!! きらびやかなもんなんぞ目立つばかりで何のひねりもねぇだろうが! 吹き溢れる蒸気機関のオイル臭とか歯車の軋みが今にも広がってきそうな生活感、ディテール! それでいて未開の技術を拓こうとする冒険心にあふれた意匠ッ! リアリティとファンタジー、安定感と独創性、レトロとフューチャー! 本来相反するはずのファクターが渾然一体となって調和する完成されたデザインの終着点だろうが!」

「やだよオイル臭のする変身ヒロインとかッ!?」


 熱をもって弁を奮う黒猫を一喝。ネロと 千明は互いをにらみ合った。


「……そんなにイヤか」

「うん」


 千明は即答する。

 物憂げに目を伏せたまま、大仰にため息をつく。


「わかった。じゃあ新しいの作るよ」

「やったぁ」


 別に戦えることが嬉しいわけではない。こちらの要望を伝えたいことだし、万一ふたたび変身することがあったとしても、あの格好よりかはいくらかはマシだろうという、期待を込めての「やったぁ」だった。


 だがそんな喜びを、次に発せられたネロの一言が瞬く間に飛散させた。


「じゃあ、服を脱げ」

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