閑話 大人を巡る年末年始
気だるい年の瀬
「ふぁ――」
こたつに入ってあくびをしているだけで一日が終わる。
目の前の二六型液晶テレビでは、旬を過ぎた芸人と女優が地方の温泉を巡っており――しかし俺は少しもそれを見ていなかったのだった。静かすぎても落ち着かないから、毒気のない旅番組をBGM代わりに流しているだけだ。
「……あー……」
こたつの天板に頬を置いた俺は、眠るわけでも、思索にふけるわけでもなく、ただひたすらにぼうっとしていた。なんとなく呼吸を続けているだけで、脳みそだってほとんど動かしていなかった。虚ろな眼で右手のギプスをぼんやり見つめていた。
もう午後四時過ぎだ。
時間ばかりが無情に過ぎ去るが、まあそれもいいかとさえ思うのである。
……………………。
サウスクイーンの年末ライブ翌日の一二月三〇日、日曜日――朝一で女性医師の診察を受けた俺は、ギプスに包まれた右手を大事に抱えながら病院を後にした。
当然、同行者などいない。
冴月晶はテレビの仕事があるとかで俺の寝起きを見届け次第行ってしまったし、刀根勇雄も俺の着替えと貴重品を持ってきてくれたのを最後にそれっきり。
魔王の奴が部屋で待ってるかもな……とそんなことも考えたが、タクシーを降りた俺を待っていたのはしんと静まり返った十畳間だった。
遮光カーテンを開け放つと、差し込んだ冬の陽光が床に散らばったデモンズクラフトのカードを照らし出す。
デッキ構築の痕跡だ。
その瞬間、自然と頭に浮かんだのは、魔王の奴を調整相手にしながら、ああでもないこうでもないと一枚一枚カードを選んでいったあの時間で。
「……………………」
しゃがみ込んだ俺は無言でカードを片付け始めた。
俺を勝利に導いてくれたのがこれか――そう思うとなにか感慨深かった。
手早くカードを片付け終えると、すぐさま電気こたつのスイッチを入れる。
そしてテレビのリモコン片手にこたつに潜り込むと、そこで俺の活動は終わりを迎えてしまうのである。
面白いぐらい唐突に、身体も、頭も、まったく動かなくなった。
ダリアをアンリエッタ・トリミューンに託したことが正しかったかどうか、ソロモン騎士団に借りをつくったマリアベーラの前途、この一ヶ月戦闘訓練に付き合ってくれた魔法少女たちへのお礼……考えたいことは幾つかあったはずだ。
それにもう大晦日前、部屋の掃除だって少しぐらいはやっておきたかった。
だが駄目なのだ。
こたつに入って一息ついた瞬間、全身から力が抜けて抜け殻と化してしまった。スマートフォンを見ることも、趣味のトレーディングカードに触れることさえできない。
――テレビの音ばかりが広がる静かな室内。
――トイレにも行かずそのまま何時間か。
「……あー……」
ここぞとばかりに怠惰を堪能していた俺だが、午後五時を迎えてさすがにちょっとは動こうかという気になってくる。同じ姿勢を取り続けて身体は痛いし、喉も渇いていた。
もう少し、もう少しだけと、動き出しを先延ばしにしていたら――不意にチャイムの音。しかも一度だけではない。何度も何度も、執拗に連打してきた。
それで俺は、何事かとこたつから這い出るのである。
病院から帰ってきた格好のままだ。愛用の中綿ジャケットにスラックス。応対のため着替える必要はなかった。
「はいはい……いったいなんだよ……?」
オートロックマンションの我が家。眉をひそめながら壁に備え付けられたモニターを覗くと、一階エントランスホールのインターホン前に立っていたのは意外な人物だった。
「悠木さん?」
そうだ。赤毛の魔法少女、スーパーアイドル兼トップモデル。華やかな美貌がインターホンのカメラを覗き込んでいる。
俺は慌ててモニターのマイクをオンにした。
「悠木さん。あの、どうかされました?」
「様子を見に来たんだ。開けてくれない?」
「様子?」
「おっさん、右手折ってるだろ? それで不便してんだろうなと思ってよ」
「いや、存外普通にやってますよ?」
「いいから開けてって。外、メッチャ寒いんだよ。荷物も邪魔くさいしさー」
「でも……今、部屋片付いていないですし……」
「はあ? 別に、おっさんの部屋にどんなどぎついAVが転がってようが気にしないって。独身男の部屋に上がるんだ。そんぐらい大丈夫だよ」
「わかりました、わかりましたから」
「んふー。いいもの持ってきてやったぞ」
インターホン越しに言い争う気力もなかった俺は、あっさり悠木悠里の要求を呑んでしまう。
オートロックを開けてやると、「来たぞー。開けろー」一分ちょっとで部屋のドアがドンドン叩かれた。室内を片付ける暇などなかった。
「はあ……」
俺は若干のうざったさを覚えながら扉を開ける。室内に流れ込んできた冷たい空気と甘い香りを感じながら、スポーティーなデニムファッションにワイン色のフリンジマフラーを合わせた悠木悠里を迎えた。
扉を開けた俺を一目見て、悠木悠里が小首を傾げる。
「あれ? おっさん、どっか行くとこだった?」
「いえ。どうしてです?」
「いや、その格好――」
「ああ。病院から戻ってきた時のままなんです。着替えるのも、なんか面倒で」
「ふぅん。んじゃ、上がってもいい?」
彼女は肩に大きめのスポーツバッグを掛けており、両手には老舗デパートの紙袋。部屋に上がるなり「おじさんって感じの家だなぁ」とニヤニヤ笑うのだった。
そして電気こたつとベッドに占拠されたリビングを見て、俺に振り返る。
「割と片付いてんじゃん」
「そうですか?」
「晶のポスターとか壁に貼りまくってんのかと思ってた」
「しませんよ。そもそも賃貸ですし」
ベッド横に積み上げられた大量のストレージボックスにも気付いたらしい。
「もしかしてあれ全部、カード?」
「ええ、まあ。ほとんどワイズマンズクラフトですが」
「すっげえ数。じゃあおっさんの力――魔王のカードもあの中にあるんだ?」
「…………それは……」
「はははっ。警戒すんなって。聞いてみただけだよ。つーか、勝手に触ったら魔王に呪いかけられそうだし、怖くて手なんか出せるか」
そう言うなり荷物を床に下ろして俺の右手首を取り上げた悠木悠里。ギプスに包まれた右手を眺め、「痛むか?」と優しい一言だ。
俺は苦笑して答えた。
「動かそうとしなければ、そんなには」
すると彼女は、何かを見透かそうするみたく、俺の目をじっと見つめてくる。やがて諦念の混ざったため息を吐いた。
「……この調子なら、次に治癒魔法使ってやれんのは正月明けだろうな」
「わかるんですか?」
「今のおっさんが魔法に耐えられないぐらい弱ってることはな。まあ、この正月はできるだけダラダラ過ごして、身体を休めてやるこった」
それを聞いた俺はもう一度苦笑してから、「何か飲みますか? コーヒーかお茶ぐらいしか出せませんけど」とキッチンに向かおうとする。
しかしマフラーを脱いだ悠木悠里にそれを制された。
「いいよ、あたしがやる。怪我人は大人しくしてろ」
それで俺は、彼女に食器の在りかと電気ケトルの使い方を簡単に指示してから、再びこたつに潜り込むのである。テレビに目を移すと、さっきまで流れていた旅番組はすでに終わり、今は、人気の男性芸人が料理をつくっていた。
開きっぱなしの扉から、食器がカチャカチャ鳴る音と彼女の声が聞こえてくる。
「あたし今日オフでさぁ。さっきまで冬コミ行ってたんだよ」
彼女が口にした『冬コミ』とは、東京ビッグサイトで開催中の大規模同人誌即売会のことだろう。トップモデル・悠木悠里のイメージとは結びつかぬ単語だと思った。
「夏にカードゲームになったせいかな。今年は結構、あたしらサウスクイーンの同人誌もあったよ。さすがにエロ系は見当たらなかったけどさ」
ひょこっとキッチンから顔を出した悠木悠里。『実在創作同人誌』の話題に戸惑う俺に、にんまりとした笑みを向けてくる。
「知ってるか? ああいう本じゃあ、だいたいあたしってマリアと百合関係なんだぜ?」
「お――同い年ですし、仲が良さそうに見えるんですかね……?」
すぐさまキッチンに戻った彼女は、しかし笑いが収まらないらしく。
「仲は良いけど、百合ってほどじゃあないな」
そう漏らしながら飲み物をいれていた。
やがて――緑茶を注いだ湯飲みを二つ持ってリビングに戻ってくる。
「どうして家に来たって顔してんな」
俺の前に湯飲みを一つ置いて、俺の対面に横座りした。こたつには入らず、緑茶をすすりながらスポーツバッグを引き寄せる。
そして彼女がバッグの中から取り出してこたつの上に並べたのは、それぞれに派手なイラストが描かれた五種類のカードパックだった。
「冬コミ行ってきたって言ったろ? それでな、企業ブースでこんなの見つけたからさ」
大人気カードゲーム・ワイズマンズクラフトの拡張パックだ。“蒼薔薇の聖女ジャンヌ・ダルク”やら“降光の熾天使ミカエーラ”やら、往年の人気カードたちが水着イラストで再録された限定パック。
俺は当然、そのカードパックのことを知っていて――そうか。冬コミで先行販売されるんだったな――と思い出した。後ほど公式サイトで通販されるという話だったから、その時まで待てばいいと高をくくっていたのである。
「五つで全部揃うみたいだったから買ってきたんだ。おっさんと晶がやってるカードゲームってワイズマンズクラフトだろ?」
「え――ええ。そうですが……まさか、わざわざ?」
「まあ。おっさんの見舞いにも来てやりたかったしな」
それで俺は「ありがとうございます。いくらでした? お金払います」とこたつから立ち上がろうとして、しかし悠木悠里に苦笑いされてしまうのだ。
「いらないって。おっさんの何十倍稼いでると思ってんだ」
「……しかし……」
「しかしもだってもねえよ。――ただ、そうだな……おっさんがどうしても気になるってんなら、前におっさんがくれたネックレスのお返しだと思ってくれればいい」
「……いいんですか?」
「気にせず受け取ってくれ。その方があたしも気持ちがいい」
「そ、それじゃあ、ありがたく――」
俺がカードパックを手に取ったのを見届けてから、老舗デパートの紙袋に手を伸ばした悠木悠里。「んじゃあ肉食おうぜ、肉」なんて声を弾ませながら、尋常ではない量の肉料理を広げていった。
ローストビーフ。
スペアリブ。
唐揚げ。
牛タン。
メンチコロッケ。
フライドチキン。
燻製ベーコン。
カツサンド。
大きな紙袋から次々出てくる高級惣菜たち。あっという間にこたつの上が赤色と茶色で埋め尽くされた。
「……あの……これはいったい……」
「骨折ったら肉とか食いたくならねえ?」
「そ、そんなものですかね……?」
「とにかくだ。たらふく食わせて、精をつけてもらおうと思ってよ。そんな右手が長引いたら仕事にも支障が出んだろ?」
「はあ。なるほど」
「それと、先に言っとくが、晶やマリアみたいな手料理はあたしにゃ無理だかんな。そういうのは初めっから期待すんなよ?」
思い起こせば今日一日何も食べていない。悠木悠里が持ってきた手土産の数々は三四歳の胃腸には重たすぎる気もするが、食べなければ回復しないというのもまた真理だろう。
「なんか色々すみません。私が怪我したせいで気を遣わせてしまって……」
「別にいいよ。おっさんがんばっただろ?」
それで俺はキッチンからフォークや箸、取り皿を一通り持ってきて。
「フライドチキンとか温めます?」
「あたしがやるよ。おっさんは先に食ってろ」
悠木悠里がいれてくれた緑茶をお供に、ローストビーフを口に入れるのだった。
慣れない左手での食事に苦戦していたら、電子レンジで唐揚げとフライドチキンを温め直してきた悠木悠里に「あーんしてやろうか?」とからかわれてしまう。
夜のとばりが降りた午後六時前。
居心地の良い我が家で悠木悠里と二人っきり。
食事中の話題は、悠木悠里がお忍びで行ってきた冬コミのことが大半だった。
「――あたしがアニメ好きだって知ってる奴? さあ、結構いるんじゃないか? 仲の良いスタイリストさんとかも知ってるし」
彼女の口から発されるアニメの話は、俺が知らないぐらいディープなものもあって。
「絶対秘密ってわけじゃない。でもイメージってのもあるからな。時々コスプレもするけど――そんな写真、あたしのSNSに載せたらすぐにニュースだろ?」
そういえば悠木悠里のパーソナルな部分を聞くのは初めてのことだと思った。
「ほらぁ。手ぇ止まってる。食わないと元気にならないぞ」
食後の胃もたれは考えないことにして肉ばかりを食べ進める。
すると不思議なことに、俺の身体を苛んでいた気だるさが少しマシになった気がした。フル稼働の胃袋を中心にして熱い血液が全身を巡るのである。
そんな折だ。
「ちょっと洗面台借りていい?」
そう言って悠木悠里が立ち上がったのは。スポーツバッグを手にリビングから消えた。
俺は彼女の行動をたいして気にもせず、燻製ベーコンに舌鼓を打つ。
一度火が付いた食欲は生半なことでは止まりそうになかった。
そうだ。俺は左手で不器用に握ったフォークを決して止めない。
「なあ、おっさんおっさん。これどう思う?」
――悠木悠里が、俺もよく知っているアニメのキャラクター姿で現れない限りは――
大きなリボンが愛らしい赤髪のツインテール。
およそ現実の高校では見ることがなさそうな、白ベースの派手なスクールブレザー。
少し動けば下着が見えそうなぐらい短いスカートに、すらりと伸びた生脚。
見間違えるわけがない。
悠木悠里が扮していたのは、ワイズマンズクラフトの販促アニメのメインヒロイン――「……獅子崎……リツカ……?」だったからだ。
俺の言葉に反応してパッと笑顔になった悠木悠里。
「やっぱ知ってたか。実はずっとハマっててさあ。知り合いのデザイナーに頼み込んで衣装作ってもらったんだよ。見ろよ、ここの縫製。袖んところ。めっちゃ凝ってるだろ? 生地もさ、私学の制服に使われてる奴の色違い探してもらって――」
そうまくし立てながら俺の隣にやってくる。
アニメ・ワイズマンズクラフト――第一二話までは凡百のカードゲームアニメだったが、第一三話にして主人公たちが突如として異世界転移。権謀術数が渦巻くハードな展開の異能力バトルアニメと化した。第三シーズンを迎えた今では、カードゲームをしないカードゲームアニメとして人気を博している。
そして、メインヒロイン・獅子崎リツカのビジュアルがサウスクイーンの悠木悠里に瓜二つということで、一部界隈で盛り上がったこともあった。
「どうだ? 似てるか?」
艶っぽく唇で笑って、俺から離れて立ち上がった悠木悠里。背中のデザインも見ろと言わんばかりに、その場でくるりとターンした。
似てるか――どころじゃない。アニメキャラ本人が次元を超えてきたのかと見紛うほどの完成度だ。
「大丈夫よ。君が立ち上がるまで、わたしが守ってあげるから」
なんだ今の声。姿形だけじゃなくて声まで同じかよ……しかも今の台詞、今の仁王立ちは……第二シーズン最終話Aパートの名シーンだ。
思わず聞いてしまった。
「あの――どうして私の部屋で、その格好……?」
悠木悠里があっけらかんとして答える。
「だって、おっさんワイズマンズクラフトのこと詳しいだろ。知らない奴にコスプレ見せるより、知ってる奴に見せた方が楽しいじゃん」
「はあ」
「カードのことは全然わかんないけどよ、アニメのことなら少しは話せるぜ」
「な、なるほど」
「おっさん昨日がんばったし、写真撮ってもいいぞ。個人使用するなら何に使ってもいい――って、今は右手使えねぇんだったな。まあ、治った時のために撮っとけ」
ニヤリと笑って、スカートを持ち上げたきわどいポーズを決める悠木悠里。
俺は苦笑を浮かべて彼女から少し目を逸らした。
「それは、まあ――遠慮しときます。画像残したままスマホ無くしたら大変なことになりそうですし」
「はあ? 心配し過ぎじゃね?」
「悠木さんも気を付けた方がいいですよ。何に足をすくわれるかわからない時代ですから」
俺の言葉に一瞬ムスッとしたような悠木悠里だったが、結局は「まあ……肝に銘じとくよ」と渋々うなずいた。
それで俺は、説教臭くていかんな……と反省する。同時にこの場を取り繕う言葉を探してみるのだが、どうにも思い付かなかった。
助け船が入らなければ、微妙な沈黙が流れていたかもしれない。
「……獅子崎、リツカ……? あ――悠里様」
合鍵を使って我が家の玄関戸を開けた冴月晶が、赤髪ツインテールのアニメキャラに驚愕の声を漏らしたのだ。どうにもすぐには悠木悠里とは気付かなかったらしい。
「おお。晶も来たか。見てくれよこれ。あたしそっくり過ぎねぇ?」
冴月晶は、真っ先に「遅くなりました。お加減いかがですか?」と俺に会釈してくれるものの、やはり悠木悠里のコスプレが気になるみたいだ。
「これ、前に言ってた衣装です? 出来が良すぎませんか?」
ブラウンカラーのロングコートも脱がずに、悠木悠里の全身をくまなくチェックし始めた。
「聞いてくれよ晶ぁ。おっさんが真面目すぎて嫌になっちゃうぜ」
「――? 何があったのかは存じませんが、悠里様が調子に乗るからでは? あ、ここの造り凝ってますね」
「晶もコスプレしてみるか? 晶ならブリュンヒルドいけるだろ」
「嫌ですよ。先週死んだじゃないですか」
「いや、あれぜってー生き返る流れだぞ。露出度高いし、おっさんも興奮するんじゃね?」
「……和泉様に喜んでいただけるなら、まあ……」
中年男の部屋に押しかけてきゃあきゃあ戯れる二人の超絶美少女。
俺はなんだか夢でも見ている気がして、ずっとつきっぱなしだったテレビ画面に目を移した。そして画面に写った人気女優の顔に――そうそう。普通の美人ってこんなものだよなぁ――と妙な現実味を感じてしまうのだ。
苦笑いしつつ、また一枚ローストビーフを口に入れた。
いくらなんでも食べ過ぎだろうか。たいぶ胃が重たくなってきた気がする。
「そういやおっさん右手使えないし、風呂とか困るんじゃないか?」
「心配いりません。ボク、水着を持ってきましたし」
胃痛で大晦日を迎えたくもないし、後で胃薬でも飲んでおこうと思った。
見慣れた携帯電話のコマーシャルが流れるテレビ画面。
それを眺める俺はふとした退屈さを感じて、「ははっ、ははは――」思わず声を出して笑ってしまう。
特段笑うところでもない場面で唐突に吹き出したせいだろう。
「――い、和泉様?」
「いきなりどうしたよ?」
冴月晶と悠木悠里をむやみに心配させてしまったようだ。
俺は二人に向くことなく、こたつの上で頬杖をついてしみじみと呟いた。
「いや、なんか……ようやくいつもどおりだなと思いまして――」
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