《第3章》純白の髪

次の日は、家の裏にある山に行くと決めていた。

この村に初めて来た時から、あの山に惹かれていた。山が…誰かが、僕を呼んでいるような気がしたからだ。


朝起きると、少し身体がだるかった。山に行こうか迷ったが、山に惹かれる心の方が強かった。


家を出て、山を少し歩いたところで、もう既に疲れてきた。体力は無い方だ。昔から、「見た目と違って体力ないんだね」と、よく言われてきた。

身長は高い方だ。でも、筋肉は少ない。つまり、痩せている。中高共に部活はパソコン部だったから、運動は全くと言っていいほどしていない。やっぱり、健康に悪いかな?なんて思ってウォーキングを始めてみたけど、結局、1週間ももたなかった。

(やっぱり、日頃から歩かないとなぁ…)

なんて思いながら歩いていると、見晴らしのいい、山の下を見下ろせる場所に出た。

「綺麗だ…」

あたり一面、田んぼが広がっていた。緑が物凄く美しい。

田舎でしか見られない光景だ。

母に見せてあげたい。母が見たらなんと言うだろうか。

ぼーっと景色を見ていた。



どこからともなく、女性の歌声が聞こえてきた。



…か細く、今にも壊れてしまいそうな声。

そう、繊細で美しく、哀しい歌声。何故か、詞の一つ一つが聴き取れない。


自分でも気付かないうちに、歌声の方へと脚が動いていた。

走っていた。息苦しい。


脚を止めてはいけない。そんな気がした。



行かなくてはいけない。



鳥居が見えた。大きな鳥居だ。

石段を目で追っていくと、


1人の女性と目が合った。


歌声の主はそこに居た。

多分、巫女らしい。

しかし、ただの巫女ではなかった。


純白の髪の毛。混じりけのない、真っ白な髪の毛。まるで、私は穢れなど知りません、とでも言うような、真っ白な髪の毛。

青い目。瞳に吸い込まれそうとは、こういうことか。


巫女は僕に微笑んだ。







僕の意識はプツリと切れた。

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