《第2章》古木さん
早速、次の日は近所の方々に挨拶をしに行く事にした。車で5分程度の所に、古木さん一家が住んでいた。
「こんにちはー。先日引っ越してきました、響と言う者です。」
ふくやかな体型の小さなおばあさんが出てきた。
「あら、こんにちは!話は聞いとります!また随分若いんやねぇ〜!」
とても優しそうなおばあさんだ。
「あの、これ、東京のお土産です。お口に合うか分かりませんが…」
と言って、持ってきた東京バナナを渡した。
「あれまぁ!!いいの?!こんなん貰ってまって!ありがとねぇ〜!あ、そうやわ!家でお茶飲んでいきんせぇ。」
そう言って、古木さんは僕をお茶に誘ってくれた。
「よぉ東京から来てくださったねぇ〜。遠かったやろ〜に。困ったことあったらいつでも聞いてくれていいんやでね〜!」
僕の勝手な偏見かもしれないけど、田舎の人はあたたかい。
「ありがとうございます。改めまして、響 雪夜と言います。これからお世話になります。よろしくお願いします。」
「へぇ〜!雪夜くんって言うんやなぁ!雪夜くんって呼ぼ!
ところでさっきから気になっとったんやけど、なんでこんなド田舎までわざわざ引っ越してきたんかなーって!」
(ド、ド直球…)
「あ、あのー、仕事で上手くいかなくて…(笑)」
古木さんは驚いた顔をしていた。
「雪夜くんみたいなハンサムくんでも仕事上手くいかへん時あるんやなぁ〜。背ぇ高いし、モッテモテやろ〜!!(笑)」
「ハ、ハンサムなんてそんな!僕はひ、必要無いので…」
古木さんはもっと驚いた顔をしていた。
「雪夜くん!必要無い人間なんておらへん!!みんな役割を持って生まれてきとるんや!雪夜くんにもちゃんと役割はあるの!自分を必要ないなんて思ったらあかん!雪夜くんハンサムなんやで自信持ちぃ!!」
古木さんは物凄く真剣な顔で言った。僕はその勢いに圧倒された。
「雪夜くんにもちゃんと役割はある____」
その言葉が胸に深く突き刺さった。出会って間もないおばあさんに自分の価値を教えてもらうなんて思ってもみなかった。
家に着いた後、空を見上げた。
景色が潤んで見えた。
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