第30話 水着回

シオリさんに特訓でしごかれまくった俺だが「世界樹の恩恵」ですぐに回復

した。世界樹のパワーが身体全体に染み渡るぜ!

 レオとソフィーちゃんも初めてにしてはよくやっていた。二人は少し軽めの

メニューだったがそれでも王族パワーで頑張っていた。

 王族パワーってなんだよ。



 今日は朝食後、海に行くらしい。


 「こんなに崖が続いてるのに海行けんのか?」


 「浮遊魔法」使えば行けるんだろうが未だに使えずにいる。世界樹ではエレ

ベーターがあったから助かったが、このまま放置するといつか詰む日がきそう

だぜ。

 何か画期的な特訓法が必要かもしれん。


 「それなら心配しなくても大丈夫だ。この城には地下があってな。そこから

  海まで出られるんだ」

 「そりゃすげぇな。そこまで計算して作られてんのか」

 「わたくしとお兄様もここに来るのは初めてですわ」

 「そうだったな。まあ、わたしもここには数度しか来た事がないんだ」

 「エルディスタンにこんな場所があるなんてね。僕は海に来るのも初めてな

  んだ」


 今の会話で気になったがこいつら泳げなさそう。テラに泳ぎってあるのかす

らわからん。


 「お前らにちょっと聞きたいんだが泳げるのか?」

 「なんだいそれは」

 「まじかよ」


 泳ぎって概念すらねぇのかよ。


 「シオリさん、これどうなの?」

 「教えて良いと思います。わたしもお手伝いしましょう」

 「何か教えていただけますの? わたくし楽しみですわ」


 胸の前で両手を握ってふわふわっと動くソフィーちゃん。

 これかわいいよなぁ。俺はこれからこれを「ソフィアポーズ」と名付けよう。




 あっ!これは久しぶりにやっちまったな。最近すげぇ気をつけてたのに。人

を褒める時に限ってこれだぜ。

 ソフィーちゃんは顔を赤くしてるし、レオとオーロラたんは苦笑いだ。


 「ハル殿は本当に正直者だな」

 「くっそおおおおおおお」

 「あらあら、ハルさんは昔から正直者ですもんね。ちゃんと口に出した方が

  良いですよ」


 何か良くない流れだ。この流れを断ち切る!


 「ところで、いつ海に行くんだ?」

 「取ってつけたような話題転換ですね」


 しかし、まわりこまれた! もう勘弁してくれ。


 「泳ぎがないなら水着もないんじゃねぇか」

 「それは海に行くというのを聞いてわたしが用意しておきました」

 「出発までに戻るって言ってたのはそういう事か」

 「皆さんにピッタリの水着を用意したので楽しみにしておいてください」

 「何だかよくわからないが楽しみにさせてもらうさ」


 レオ楽しみにしておけよ。きっと良い物が見られるはずだ。げっへっへ。



 城の地下っていえば牢獄というイメージだったがそんな事はなかった。地上

より冷えるから倉庫にはしてるんだろうが。

 ひんやりとした石造りの壁に不思議な灯りがついていて、延々と螺旋階段が

続いている。


 「こりゃまるでRPGの中に入り込んだみてぇだな」

 「あーるぴーじー? 聞いた事のない言葉ですわね」


 やっべ、ソフィーちゃんに聞かれてたか。なんとか誤魔化そう。


 「RPGっていう役割を決めて演じるゲームがあるんだ。そのゲームではこ

  ういった古城の地下とかが舞台になる事が多いんだぜ」

 「わたくし、初めて聞きました! 役割を演じるなんて楽しそうですわ」


 ソフィーちゃんは目を輝かせている。本当にキラッキラしてるなこの子。


 「勇者ソフィアが悪い魔法使いによって古城に閉じ込められたオーロラ姫を

  助けだす!とかな」

 「わたくしが勇者ですのね! すごいですわ!」


 ソフィーちゃんぐらいの年頃だときっとハマっちまうだろうな。


 「それで勇者ってなんですの?」



 勇者も知らなかった。そこからだったかー。なんですごいですわ! とか喜

んでたんだよ!

 その後、階段を降りる間歴代の勇者について語った。ももたろうさんときん

たろうさんとかぐやひめさんを勇者にし、シリーズゲームのストーリーをアレ

ンジして作った話はソフィーちゃんに好評だった。


 「パクりですよね」

 「パ、パくりじゃねぇし! 2次創作だし!」


 だがよく考えてみた。以前こんな事があった気がする。


 「テラに著作権なんて及ばねぇんだよなぁ。がはは」

 「完全に中ボスで出てくる山賊ですね」


 ソフィーちゃんぐらいの年だと魔法少女物の方が良いのかもしれねぇが、テ

ラって魔法少女から魔法老婆まで実在しちまってるからな。

 俺自身が既に魔法外国人部隊兵になってるのもあるし。



 そうこうするうちに螺旋階段を降りきる。

 そこは海食洞になっていて、光の射す方を見ると外へと繋がっていた。

 足元はキメの細かい砂でそれを踏み締める感覚は「海にやってきたぜー」と

いう謎のテンションにさせられた。


 背面を崖で覆われ古城の地下からしか来れないこの砂浜は、プライベートビ

ーチの体を成していて素晴らしかった。


 「ここへ来たのも子供の頃なのでだいぶ前だが、その時は足を水につけてる

  だけで楽しかったよ」


 小さな湾のようになっていて波も穏やかなここなら子供やこいつらみたいに

泳げないやつらでも楽しめるだろう。

 今日は徹底的に泳ぎを叩き込んでやるぜ。



 崖になってる事もあり砂浜には大きな岩が転がっていた。その物陰で着替え

る事になったが俺はジェントルメーンだ。不埒な事など考えないぜ。


 「落ち着きがないけど大丈夫かい?」

 「あ、あぁ俺は大丈夫。大丈夫だぜ」


 こいつは本物の紳士だ。こいつと一緒にしちゃいけねぇ。俺もレオの落ち着

きを見習おう。


 水着をシオリさんに渡された時点で気付いていたがおかしくねぇか。

 レオと俺の水着が同じ赤だという事はまだしも、なんでレオがブーメランで

俺が褌なんだよ! 悪意しか感じねぇよ!

 

 「お待たせー待ったー?」

 「今来たばかりだぜ」


 そんな海でのリア充会話の相手が褌だった事を考えて欲しい。こいつぅとん

だお祭り野郎だな☆とはならねぇよ!



 諦めよう、全てを。

 早くソフィーちゃんとオーロラたんの水着姿で癒されよう。



 しばらくすると女性陣がやってきた。こいつぁヤバイ。


 ソフィーちゃんはフワフワなフリルが沢山ついたビキニで地球ならそのまま

服としても着られそうな、夏らしさを感じる明るくキレイな柄の水着だ。

 サラサラな金髪をいつもの縦ロールとは違いツインテールにしていてそれが

また……。正直、踏んでくれ!


 オーロラたんの水着もフリルがあしらってあるが、こちらはシックな黒いビ

キニで真っ白な肌に映えていた。これでサングラスでもかけたらリゾート感満

載でビーチの視線は釘付けだろ。

 いつもは下ろしているプラチナブロンドの髪を高めのサイドテールにしてい

た。


 これシオリさんプロデュースなんだろうけど破壊力やべぇな。雑誌の水着特

集そのまま出てても違和感が全くねぇ。


 そのシオリさんは銀髪をポニテにし淡い色のワンピースのような水着を着て

いた。サイズ的に完全に着せ替え人形だった。

 銀髪ポニテとか好きな人は好きなんだろうなぁと思いつつ母親幼女を見て吹

き出した。


 いや、なんとなくそうだろうなとは思ってたよ。こういった時に絶対外せな

い定番になりつつあるからな。

 それでもあえて言わせてもらおう。


 「さすがに「3−2 すてら」はねぇよ!」


 本人は「初めての水着なのじゃー」って大喜びだけど絶対わかってねぇぞあ

れ。3年生かよ! 母親幼女だからありなのか……。



 いやねーよ!



 この心の中で思ってた事全部シオリさんにバラされた。俺が自然と口から出

さなくても心の中読んでバラしていくスタイル。


 ソフィーちゃんとオーロラたんは喜んでくれてたから良いけど母親幼女は落

ち込んじまったじゃねぇか。だから個別にフォローしておいた。


 よく似合ってるぞ、と。


 幼女まじちょろい。

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