第2話 就活のはなし
今月は、ろくなことがない。
不幸が不幸を呼ぶ。
連日届くお祈りメール、毎日のように落ちる面接。
あと、かなり志望度の高い会社の書類送付日時を間違えて手帳に記載していた。本当は21日締め切りのものを、27日締め切りだと勘違いしていた。人間、疲れると1と7さえ見分けられなくなるんですね。辛すぎる。
私はどうしてこんなに、苦しまなくちゃいけないのだろう。
実はそこまで私は面接が不得意なタイプではない。外面の良さには定評がある。
そんなに勉強はできないけど、筆記試験に落ちまくるというほどでもない。油断していると落ちるけどね。
それなのに、内定がない。
内定がない。ない内定。辛くないわけがない。
つい先ほど私は、第一志望の会社から不採用の通知を受け取った。
あまりに悲しくて、逆に悲しくならなかった。
人間ショックを受けすぎると、脳がバグを起こすようだ。
最近の私の脳はバグりすぎである。毎日歩き回って疲労困ぱいの中、電車から降り、そびえ立つ駅の階段を見たとき、上らないといけないのにどうしても上りたくなくて、表情筋がぶっ壊れてニヤニヤしてしまった。自分が怖くなった。
なぜ階段を上ることくらいがそんなに嫌になるのか、そんなに嫌になった結果、脳がバグってニヤニヤしてしまうのか。
身体的ダメージはまだ治りやすいから良い。問題は精神的ダメージだ。
私はもう数え切れないくらいの数の会社からお祈りされている。
お祈りされすぎて神になりそう。むしろ、なりたい。もうダメだもん。生きてて良い価値がない。
でも痛いことは嫌だから、20年とちょっと生きながらえている。
私は、ややひねくれているところ以外、ごく普通の女子大学生なのだが、
育った家庭環境はあまり普通ではなかったのだなと大人になってから気がついた。
普通に父がいるのだが、亭主関白気取りで、仕事が忙しくてほとんど家にいない。父は機嫌が悪いとすぐにキレて、暴力を振るわれたこともある。小学校の入学式の日、理由は忘れたが父にキレられ、顔を殴られて鼻血を出した。すごく怖かったが、父はそんなこと忘れている。学費は払ってくれている。
普通に母がいるのだが、九州で生まれ育った人のため、男を立てることに生きがいを感じている。母にとって女の私はゴミ同然である。母は父のことをうまく手のひらで転がし、夫婦の共通の敵を私とすることで、仲睦まじい夫婦関係を築いている。
実は兄弟もいるが、割愛させてもらう。
私はテレビドラマなどでよく見る、フィクションの中の家族があまり信じられない。
逆にこれを読んでいる人の中には、私の家庭のことが信じられない人もいるだろう。
そういうことだよ。
私も逆がわからないから、そう思うよ。
なんのために胸糞悪い話をしたのか?理由はちゃんとある。
この小説、実は書きながら展開を考えているので、どんな方向に転ぶかわからないけど、さすがにそういうところは大丈夫ですよ。
就活というのは、
過去の自分と向き合う機会がかなり多いものだ。
エントリーシートを書くにしても、自分というものを紙ペラにまとめる作業が必要だ。
学歴は?志望動機は?学生時代頑張ったことは?
うるせえええ!どこの会社も似たような質問してくるなよ。ムカつくな。
取り乱した、失礼。
ムカつきつつも、過去の自分と向き合わなければならないのだ。
より深い自己アピールのために、自己分析も必要だ。私はこの自己分析をするのがきつい。
母にはいじめられ、父には理不尽にキレられた記憶しかない。
親は選べない。それにしたって私は運が悪すぎた。不幸の星の元に生まれてしまった。
認めたくないけど。
もうこの時点でさー
ハンデが大きすぎるんだよ。
言い訳にはしたくないけど、普通の家庭で育った子たちとのハンデは大きい。
既に内定を勝ち取った友達は、よく家族の話をしていた。
悔しくて、悔しくて仕方がない。
楽な自殺の方法が知りたくなる。
八方ふさがりすぎて、あまりにも苦しいので、占いをしてみた。
昔流行った、六星占術。
なんと私、去年から大殺界に入っていた。
去年も悪いが、今年は最高に悪いらしい。来年は今年より少しマシになるが、それでもまだ大殺界は抜けられないらしい。
なんだ、就活うまくいかないのって、
大殺界だからじゃね?
そう思うことで少し楽になれるから、占いもたまには良いのかもしれない。
……なんちゃって。
つらみのK点を越えると、
冬木さんに会いたくなってしまう。
でも今はなぜか会いたくない。
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