第18話 仏の顔もサンド

 鎌倉の大仏はこげ茶色だと思っていた。銅でできてるもんね。


 「鎌倉」も「大仏」も茶色をイメージする言葉である。と俺は思う。


 渋谷で買い物をしている女子に鎌倉のイメージカラーをきいてみたら、


 「鎌倉のイメージカラー? 絶対、金色だって!鎌倉っていったら、お寺じゃーん、だったらぁ、金色!」


 (それは金閣寺だな。)


 「それに大仏も金色でしょ? あれ? 頭だけ黒だっけ? パーマのところ。なんか笑えるし、プッ!」


 (それは螺髪らほつだな。)


 「あ、そういえば、となりのクラスに『大仏』いるじゃん!誰だっけ?」


 「山田でしょ?あのデブ。キャハハ!」


 (それは単なるあだ名だな。)


 「山田、こないだホノカの彼氏に告ってフラれたんだよね。」


 (女かよ!女であだ名が「大仏」って可哀相すぎるだろう!)


 「キャハハハ…で、なんだっけ?」


と、答えるだろう。そして俺の堪忍袋かんにんぶくろの緒が切れるのだろう。やれやれ。


 えっと、なんの話だったっけ? あ、そうそう、こないだ久しぶりに鎌倉の大仏に行ってみたら大仏が緑色だったことにあらためて驚いたのだ。鎌倉の大仏は屋根が無いので雨風に長いことさらされていて、その色は緑青ろくしょうによるものなのだが、青空の下で緑色になってしまった大仏を多くの外国人が囲む状況はちょっとファンタジーな気がした。


 そういえば、こないだの台風もこの大仏さまはこの状態でいたのだろうと思うと、すでに悟りを開いているのに(大仏は如来にょらいなので悟りをもう開いている。悟りを開くと髪の毛がパンチになるらしい。一方でお地蔵さんのような菩薩ぼさつはこれから悟りを開くのでアタマを丸めている。なので、坊主頭だった人が突然パンチパーマになっているのを見かけたら、その人はきっと悟りを開いた人なのだ。)、ものすごい雨や風を頭から全身に受けて、たまに飛んでくる木の枝があたったりして、


 「まだ修行かよっ!」


とツッコミを入れていたに違いない。ああ、そうじゃ、そうなのじゃ。


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