第9話 おしゃれな部屋にするために
やすきよの花王名人劇場のビデオセットだな。
六畳の俺の部屋は物で溢れかえっているので、今年こそはいらないものを捨てて、寝ながらにしてすべてのものに手が届く生活をやめようと思っている。部屋を見回しながら俺は綿密な計画を練ることにした。ごみの日ごとにコンビニのビニール袋一つ分、いらないものを捨てていけば、3か月もすればだいぶ部屋はスッキリするはずだ。
(そうだな、ということはそれなりにコンビニ袋が必要になるということだぜ?タバコとコーヒーぐらいじゃ小っちゃい袋が関の山だなあ。オレが思うに、あそこのセブンの店長だったら袋にすら入れてくれないかもしれないぜ?)
そうか…と、俺は俺の左肩に出てくるいつもの黒い悪魔の言うことに次第に説得されていった。
「ジャンボコーンか…」
思わず口をついて出た単語に自分で驚いた。俺は何を言っているんだ?こいつの口車に乗せられて毎日毎日ほんのりした甘さが癖になる、ほど良いはちみつ風味のジャンボコーンを買おうってのか?確かにジャンボコーンは100円だから毎日買ってもたかがしれてるし、その上ポテチサイズなので、さすがにあの店長でも袋に入れてくれるだろう。
んー、でも毎日同じ店で同じもの(ほど良いはちみつ風味のジャンボコーン)を買うのはいくら人目を気にしない俺でも気が引けるなあ。近所のセブンは2軒。あと、仕事場への行き帰りに立ち寄れるセブンは3軒。土日はお休みにしてと。ん?おお、同じ店には1週間に一度だけ行けばよいではないか。トレビアーン。
(アタシ思うんだけどぉー、ヒャッキンでごみ袋買えば?)
おれの右肩上がりの右肩の上に出てきた白い天使が変なメロディーに乗せてそう言った。
ああ、そうだな。お前の言うことはもっともすぎてちょっとつまらない。空気を読まずに何にでも水を差すのがお前の悪い癖だ。この日本における「空気」と「水」の関係については山本七平さんの名著「空気の研究」を読んでいただきたい。
そろそろここら辺も梅雨だ。誰がどう見ても梅雨はれっきとした季節なのに、なんで人はみんな四季とか言って梅雨を仲間外れにするんだろう。季節が飲み会を開いたら、梅雨の隣で飲んで話を聞いているのは冬のような気がする。梅雨の愚痴に付き合ってた冬がたまに挟んでくるオヤジギャグに、それまで春と秋に夢中で自慢話をしていた夏が目ざとく反応して、「冬、お前、
(その話、アタシにもっと聞かせて。)(オレにも。)
いや、もう終わりだから。お前らうるさい。
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