第8話 君は1000%
昨日久しぶりに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を1から3まで全部見た。だからなんだというわけでもないのだが、当然見終わった後のおすすめ映画リストには「ビバリーヒルズ・コップ」シリーズが並ぶのである。
まあ、基本的に天邪鬼な俺は、動画でも曲でも「おすすめ」されることに嫌気がさしてしまうので、たまに絶対ハズレと分かっている動画を見たり、全く興味の無い品物を「欲しいものリスト」に加えて、YouTubeやアマゾンを欺いてみたりする。でも、それで全く興味のないものを執拗におすすめされるのもそれはそれで腹が立つんだよね。
つまりはそれが何であれ、俺の興味関心に関わらず、俺は「おすすめされること」に腹を立てているのだな。ああ、そうなんだねえ。
ひとことで言えば、
「余計なお世話だバカヤロー。」
ということである。
と思っていたら、そんなオイラの心を踊らせるおすすめニュースが飛び込んできたではないか。ジャッパーン!あ、おっくせんまん、あ、おっくせんまん。
俺はカプセルトイ、いわゆるガチャガチャをこよなく愛しているのだ。大型スーパーや、ホームセンターや、ビデオ屋の前に並ぶカプセルトイマシーンを見ると思わず、「ガチャチェーック!」と叫んでしまう。
以前、部活の生徒を大会に引率していた時も、休憩で寄ったショッピングモールのフードコートに50台ほどのガチャガチャが並んでいるところで思わず興奮してしまい、
「みんなたち、ご一緒に、はい、ガチャチェーック!」
と言って子どもたちの失笑を誘ってしまった。
いや、そんなことはどうでもいいのだ。ニュース、ニュース。ニュースの話。おもちゃのバンダイから「ダンゴムシ」のガチャが発売されるらしい。しかも、縮尺10倍の完全に再現されたそのダンゴムシは丸くなった状態でガチャに入っている。つまりカプセルがいらない!カプセルレス!エコ!環境にやさしい!ガチャから転がり出てきた「ダンゴムシ」を広げると14センチくらいの歩いてる状態になるのだ!ワーオ!色は、黒、青、白の三種類。ガチャ一回500円!
はっはっはっはっは…。
馬鹿野郎!
馬鹿馬鹿しいにも程がある。誰が買うんだ?そんなもの!
ごめんなさい!俺です。俺が買います!
大好きだもの!そういうの。
なにが好きかって?このダンゴムシをガチャにしようと思って途中で正気に返らなかった開発と制作が好きだ。こういうものはその場に居合わせた人間のうち、誰か一人でも正気に戻ると絶対にできない。
「そんなことはありません。僕らはあくまでも合理的にマーケティングがどうの、コストがなんちゃら…」
いやいや、そういうことを「ダンゴムシ」について言っているということがもう既に正気ではないよね。
ひょっとすると、この「ダンゴムシ」もある意味では失敗作かもしれない。全然売れないかもしれないしね。でも、俺は失敗できる人たちが大好きだ。言っとくけど、この人たちは失敗を恐れていないとかじゃないからね。きっと思いついたときから「やったー!スゲーの思いついた!」って当たり前のように信じ切って「ダンゴムシ」作ってるからね。
合理性と臆病を取り違えてることに気づかないまま腐ったイワシの目をして口をパクパクしている連中よりも、「ダンゴムシならカプセルがいらないんじゃねー?やったー!」って本気で喜べる健全な狂気がまたいつか「たまごっち」みたいなものを作り出すんだろうと思うのだ。きっと。
おすすめ、グッジョブ。今日は巨大なダンゴムシに乗って冒険する夢を見よう。ドリトル先生みたいにね。
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