第9話 居場所
こういう生活を送っていると、家での居場所がまったくないということに気付く。
部屋にこもるか、外に出るか。
タバコの件以来、当面は外出は禁止であったし、その時に一緒に吸っていた友達の家に父が報告しに行き、友人関係も薄れていった。
そんな中、唯一の居場所であった祖母の部屋。
学校から帰宅すると部屋に行き、祖母の好きな野球の試合をテレビで見ていた。
夕飯は一人で先に済ませ、宿題もここで済ませることも多かったが、中学生活の半分以上は祖母と過ごした。
母は祖母が嫌いらしい。
ご飯を呼びに来る時も、なぜかふすまを強く閉めたり、二人で食事している風景を見ると会話が全くなかった。
あとから聞いた話ではあるが、母は祖母から強烈に文句を言われていたらしい。
当時はそんなことも知る由がなかったが、空気感で分かった。
私の部屋は二階だったが、誰が階段を上がってくるのか足音で分かるくらい神経を尖らせていた。
また怒られるのではないかという恐怖からそうなっていたと思うが、誰が来てもいいようにいつも机に向かっていた。
ゲームのできない私にとって、一人の世界に入るときはもっぱらラジオを聴いていた。
聴き始めた理由は単純で、当時好きな女の子が聴いていたため話を合わせるために聴き始めたのだ。
その子はオールナイトニッポン専門だったが、私が当時夢中だった番組がドリアン助川の魂のラジオであった。
色々な悩みを持った中高生が電話を掛けて、悩みを相談しているのを聴いているだけであったがとても楽になった。
もちろん私の部屋に電話などないので、相談もできないが、自分と似たような境遇の人がいるのはなぜか安心していた。
ラジオだけが自分の居場所であった。
あなたにもそんな居場所はあるだろうか?
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