第6話 真っ白というのは?

中学に上がった私の世界は変わることなく、地獄というところに住んでいた。



父の仕事のストレスで、毎日のように叱られ、謝罪をしても続く殴打の嵐。


ある日、部活の練習で外を走るトレーニングをしていたことがあった。

夏真っ盛りで暑い日であったため、上半身裸でいた。

それを帰宅途中の父の車から目撃され、帰宅と共に始まった。


そんな恥ずかしい行為をするな。


ただその理由だった。

親が恥ずかしいという理由で、子供を教育。

私にはなぜか分からなかった。

他人に迷惑かけるなと常々言われてきたが、迷惑という理由が分からなかった。

今では、迷惑という言葉は話す方にとって都合の悪いことは起こさないでね、という念押しの言葉であると理解できたが、当時の私は誰に迷惑かけていたのかがとても気になっていた。


その日は固い床に3時間ほど正座させられ、父の食事を見守り、たまに箸でつつかれながらの時間であった。



成績に関しても、とても注意されてきた。

数学で85点以上取らなければならなかった。

夏休みのある日、分からない問題をそのままにしていたのが父の目に入り、そこからスパルタでの授業。


何時間でも続く大きな声で教えられ、いつまた殴られるか分からない恐怖の中にいる私の頭の中は、突然何も考えられない状態になった。


この問題の答えの式を書け。


書けるわけがなかった。

14という答えを求める問題の式を書かなければいけなかったが、なぜか何も書けなかった。


理解できていないのか?

恐怖で書けないのか?


どちらの理由にせよ、なんとかして14を求めなきゃいけない私は、このように書いた。


5+8+7-6


自分でも何がなんだか分からなかった。


当然、ふざけていると思った父はさらに激昂しどんどんエスカレートしていった。

勉強を教えられているのか、ただのサンドバックになっただけなのか分からない状態で、ついにはゲームを取り上げられてしまった。


私が家でゲームをできなくなった瞬間であった。

それ以来、二度と家でゲームをすることなく生活してきたが、未だにどこにあるのかが分からない。



真っ白な状態になるのは、心理学の用語で言うと解離というらしいが、酷い罵倒の中で私の脳がついに思考不可能な状態になった合図であった。


それからというもの、いつものが始まると真っ白になった私は、何もできずにただ相手にされるがままになっていった。


大きな声はトラウマだ。

人に手を上げられると、とっさにかがんでしまう。

今でも取ってしまう行動。


ただの人形でしかなかった。

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