第3話 暴力を受ける側の特徴?

なぜか父には歯向かえなかった。


いつの日からか暴力を受けることに慣れていき、むしろ暴力を受けないことの方が、自分の気が済まないんじゃないか?と思うようなことさえあった。

早く終わってくれ。

そんなことばかり考えた。



父はストレスの解消を子に向けた。


今となって考えられるのは、それで家族と言う名の集合が機能しているのであれば、それはそれでいいんじゃないかということ。

暴力を受ける側は、小さな箱の中ではこれが当たり前だと考える。

他の家族の形が分からない。

外には出られない。


外に出ても、幼い子供には生きられない。

そして暴力を受ける替わりに、生を与えられる。


恐ろしい図式だ。



家族で旅行に出かけたことがあった。

写真を現像するのを見ると、私と妹が寄り添うように寝ていた写真を見つけた。

両親はそれを見て、ちゃかすように話をしていた。

無性に恥ずかしくなり、その写真を破り捨てたことがある。



また、自転車を与えられたことがあった。

買うのは高いからといって、古びた自転車を拾って青いスプレーで色を塗り直しただけのものだった。

私はそれで団地に住む友人達の集まりに行ったが、あまりにもお粗末な自転車だったのでバカにされ、泣きながら帰ってきた。


しかし、これを両親に訴えても何も変わらない。


それ以来、劣等感というものに酷く縛られていくのであった。



毎日のように繰り返された暴力であったが、一つ気付いたことがあった。


これを受けているのは自分ではないと、夜寝る前に言い聞かせながら寝ると次の日なんともなく起きられるようになった。


コンパスのお金の件から祖母には、外にパトカーが走っているのはお前を捕まえるためだ、隣の家の人がいないのは犯罪で捕まったからだと毎日のように言われた。


誰も表面でしか見ることしかしなかった。

少しも優しく話してくれることもなかった。



しかし、この現実は自分ではないと思うとまた楽になっていった。




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