第2話 型にはめていいのか?

幼少期の私はとにかく周りとは違った行動をしていた。


今でも変わらないのは金への執着があることだ。


3歳の時から、母が買ってきたジャポニカ学習帳で、母が出した足し算引き算の問題をやらされていた。

その日の問題が終わると10円がもらえた。


それでも、周りの友人達が持っているようなプラモデルや、自由にお菓子を買いに行くことはできなかったことに酷く劣等感を感じていたことを覚えている。



ある日、近所の幼馴染の家に遊びに行った時に、遊んでたガンダムのプラモデルを家に持ち帰り母親に叱られ、二人で謝罪しに行ったことがある。

恥というものばかりが先行して、謝罪に行った時もずっと母の背中に隠れていただけだった。


なぜ持って帰ってはいけないのか?

それがどうしても分からなかった。


この症状は今でも続き、どうやら私の中には罪悪感というものがないらしい。

発覚したらどうしよう?

そんな程度にしか考えていない。



また、二つほど年上の友達の家に泊まりに行った時は、ゲームをするためにテレビを動かすことを頼まれたが、そのテレビを棚から落としてしまい、ゲームのコントローラーを壊した。


しかし、その場に友人がいなかったため私はそのコントローラーを隠した。


正直に話せば済むことだろうが、なぜかそんなことができない。自分の罪を認め謝ることができないらしい。



数年前、インターネット上で見かけた情報でADHDという言葉を見つけた。

もしかしたら、私はこの症状なのか?


この先、私が歩いてきた道を辿っていく上で重要になる言葉ではあるが、本当にこの症状なのだろうか?

この言葉一つでこれまでのことを解決できるとは到底思えないが、どうやらこれが一番しっくりきている。



初めて祖母の財布からお金を盗んだ時、なんとも言えぬ興奮に包まれた。

「これで好きなことができる。」

そんな興奮もつかの間で、友人たちと近所の駄菓子屋でお菓子を買って食べているときに、父に見つかり叱られた。

初めてゲンコツを喰らった時である。


それからなぜか祖母は両親に隠れてお小遣いをくれるようになった。

祖母の部屋にあるテレビの下に、数日おきに数十円が置かれて、持っていくことができた。


小学校に上がると徐々にエスカレートしていき、友達の家にあった1000円札を持ち帰り、学校の近くの駄菓子屋でお菓子を大量に購入し、喜んでいたことがある。

それを駄菓子屋の店主から学校に言われ、小さい子供が1000円札で買い物できる訳がないとのことで、担任から事情を聞かれた。



初めて公になった時である。

学校の担任が家に来て、両親と何なら玄関先で長時間話しているのを、遠くから見ていた。

その時から、父による暴力が始まった。


とりあえず私を投げ飛ばす。

それから、立ち上がろうとする私に蹴りを入れ、踏みつけてくる。

なんでそんなことをしたんだ?

大声で叫び質問されるが、泣いていた私には答えることができなかった。

黙っていると、頭を殴る。

そしてまた投げ飛ばされる。


顔を殴ることはしなかった。


その日は母の助けもあって、これで済んだが、その日の夕飯は与えられなかった記憶がある。



しかし衝動は抑えられず、3年の時には、クラスの生徒各々がコンパスを買うということになり、一人300円が徴収された。

徴収されたお金は緑色の箱に入れてあり、教室内に置かれた担任の机の中に

置いてあった。


私はそれを当然のように盗った。


なんとも言えぬ感覚にだった。

今がチャンスだ!これで好きなものが買える。

そんな言葉が頭に浮かんできて、どうやって盗ろうかしか考えられなくなる。


そんな興奮も少しで消える。

バレると当然のように父からの説教という名の暴力が始まった。

前回よりも長かった。


だが決して顔を殴ることはしなかった。

当然のように投げ飛ばされ、灰皿を投げられ、うずくまったら蹴られる。



父は私のことをどうしたいんだろう?

母は幼少の頃から勉強させてどうしたいんだろう?


そんなことばかり考えていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る