赤紫の他人

周りの誰も知らない国へ行きたい。


誰も知らない話を聞いて、誰も知らない料理を食べて、誰も知らない音楽で踊って、誰も知らない人になりたい。


風の噂で知られたい。

「あいつ、誰も知らない所に行ったんだって。」

「あいつ、誰も知らない言葉を喋るんだって。」

「あいつ、誰も知らないもん食ってんだって。」

「あいつ、誰も知らない踊りしてるんだって。」


すると、黙って聞いてたそいつは、ようやく口を開く。

『そうなんだ。ところで、お前、誰だよ。』

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