06 獣耳は実在したのか(歓喜)

転移失敗してから何日ぐらい経ったのだろうか。多分1ヶ月は余裕で経っているに違い無い。

そろそろ熊も狼も兎も見飽きてきた。

もっとなんか別のモノを見たい。別に虫でもいいからさ。もしくは野菜が食べたい。ついでに魚も。


すると、遠くから物音がする。生き物の鳴き声じゃなく、人間らしきモノだ。一応敵かもしれないので身を隠す。

通りかかったのは複数人の人影。

数は8人か。内、普通の人類が4人、エルフが3人、獣耳が1人、か。

殆どの人間は鎧の類を着ている。

多分鎧を着てない奴は魔法使いの類だろう。その上装備品は大体派手さとか格好良さ重視に見える。確かに格好いい装備は好きだが実用性が無いのは少しばかりアレである。どちらかと言うと獣耳の装備の方が年季というか使い込まれていると言った感じがして好きだ。

にしても、エルフや獣耳って初めて見たな。どちらもファンタジーものや異世界モノにはよくある奴だ。特に個人的には獣耳が気になるところ。エルフはどうでもいい。あれ正直言って余り人間と変わんないと思う。

何か話声が聞こえてきた。



現在、私はあるパーティーに所属、いや、こき使われている。

「ったく、何遅れてるんだよ。」

「使ってやってる分だけありがたく思え。」


前を歩くアホどもは談笑し続ける。

確かに、私は魔法を使えない。そう考えるならば私は役立たずだろう。だが、そもそもランタン程度で足りる光源をわざわざ光魔法を使うのだろうか。かすり傷程度に魔法をわざわざ使うのか?

そもそも上位の冒険者ならば何故最初から飛ばすのか。そんなんじゃ後まで持たないのは明白だ。ああ、深層に潜れるからってこんな阿呆につき合うべきじゃなかった。

そう思いながらも、取りあえず着いていく。

「にしても、何でガラクタを作るだけの奴を迎えたんだ?」

「いざとなれば盾、おとりに出来る。それに、機械だなんて言う役立たずを作る奴なんてその程度の価値しかねぇよ」

「何でこんな害獣が冒険者やってるんだろうね?」

誹謗中傷を続けている。

そもそも、才能でしか使えない魔法に頼りっぱなしだからいつまで経っても人員不足なのだ。

もし許されるならこいつらを後ろから撃ち殺している。



これはひどい。

内容は人間4人とエルフ3人が獣耳1人を魔法が使えない、役立たずばかり作る、と言っていじめてるような内容だった。獣耳は終始喋らなかったが、目には不満が溜まっていた…ような気がする。

にしても、魔法が使えないと軽蔑されるのだろうか?そういう世界なのか?

確かに、魔法は防御関係無く攻撃が通る。

そう言うことならば確かに魔法を使えた方が有利だろう。

だが、魔法を使う前に倒すとかそう言うことも出来るのでは無いのだろうか。

取りあえず、今後下手な接触はしないように気をつけよう。


だが、そう思った瞬間、気づいていなかった熊に奇襲を受けた。

バックステップで回避して、『試作型40mm単発式銃』で脳天を撃ち抜く。

パァン、という音とともに頭の一部を失った熊が倒れる。

「ふう…びびった」

だが、私はこの時点で気づくべきだっただろう。

件の集団にモロに姿を表してしまった。

結果は最悪なモノだった。

「見たことないモンスターだ!殺せ!」

「人間様の形してんじゃねぇ!」

「身包みはぎ取ってやる!」

「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!?」

ある者は剣を持ち、ある者は杖を構え、突撃してきた。

え゛、ちょっと待って!?何でモンスター!?Why!?何でェ!?

「死ねやァ!」

一人、切りかかってくる。

半身になって回避してから、剛槍のとがってない部分で突いて吹っ飛ばす。

次に、火の玉が飛んでくる。

幸いにも弾速は遅く避けれる。

一発当たりそうなモノがあったので『試作型40mm単発式銃』で相殺する。

殆どの人間、エルフが唖然とするが獣耳だけは感心したような顔をしている。なんでさ。

その隙に飛翔爆雷を呼び出す。そしてそれを地面に向けて刺す。

爆発、爆煙に紛れて『手回しドリル』で地面に穴を掘り、隠れる。


上はしばらくざわついていたが、次第に声が遠くなっていきやがて聞こえなくなった。


完全に人の声が聞こえなくなり、魔力感知HMDでも反応が検出されないと分かったので地面から首を出す。

「まさか、新手のモンスターに間違われるとはなぁ…」

仮説ではあるが、私の種族は『読み込み不可』だったため、人間として認識されなかった。若しくは、人間と似たモンスターが存在するのでそれに間違われた。

もし、この仮説が正解だとしたら…

「やっぱりぼっち確定か…。」

まあ、どうせぼっちで生きるつもりだったし、いいか。

別に寂しい訳じゃあないよ!


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