第51話 マイナミ商会社屋

王都の広場の際に建てられたマイナミ商会社屋の建物の外観ファザードの大きな特徴は、南側の壁面がほぼ一面透明になっていることと。この世界ではほとんど見られない大きな片流れの<勾配屋根>があることだ。


構造の接合部は魔法力に頼ってはいるが、外的要因による経年劣化に対しては工法で解決するようにしているのが基本コンセプトだ。

そのため、は、我々の世界でもかなり大きめの壁芯から70CM取り、雨の吹き込みが外壁になるべく触れないようにされている。


南側には大きなデッキが据え付けられ、外部で資材を造作しながらの打合せが可能な仕様になっている。

ここは「完成見学会」の時のように、ガーデンパーティーのようなイベントを行う場とすることもできる。


南面の大きな透明な壁面によって社屋内は常に明るい日差しが差し込む。

1階の半分を占めるスペースは、外部からの顧客達の打合せスペースで、南側の明るい日差しを浴びながら打ち合わせができる。

天気がよいときはデッキに出て行って打合せを行うことができる。


1階の北側は開放的な南側のスペースとは対照的にきっちりとした壁面で覆われ、外部に漏らしたくない事項の打合せを行う部屋が、東側に。数十人が入ることのできる会議スペースが西側にレイアウトされている。


2階の吹き抜けに面した部分の西側には、安西の設計スペースが設けられ、打合せスペースを常に眺めながら安西はデザインに励む。


吹き抜けに面した廊下から壁1枚を挟んだスペースには、田尾といすみの設計スペースがある。

ここは吹き抜けからは壁一枚隔たれているので、落ち着いて設計できるスペースではあるが、安西の設計スペースからは即、彼らの部屋に飛び込んでいけるレイアウトになっているので、そういう意味では決して落ちつける場所ではないが、このレイアウトは安西が頑として譲らなかったため、初期デザインのまま完成した。


2階の北東側の大部屋には、5卓程度の設計卓が置けるスペース設けられ、華江やあかりの設計、事務スペースとなっている。


レイアウトの基本コンセプトは、「打ち合わせは開放的に。作業は落ち着いて行う。開放的ではあるが、プライバシーや機密事項も遵守すること」である。


建物の床面積は1階が110.63㎡。2階が71.8㎡。

延床面積は182.43㎡。概ね、55坪ほどの面積で、決して大きい建物ではないが、必要最低限の機能を満たした社屋だ。


カリュクス製の門型フレームとアマルガムを使用した、小規模ゲイアサプライヤの施工方法は確立されたので、マイナミ商会の今後の業務が増える段階で、随時増築をしていくことも計画に入っているため、各部位はアマルガムの壁面を一部撤去するような間取り変更に対応できるように、構造上の配慮もされている。


社屋が完成したところで、いよいよ、本来の依頼内容である領事館建設の計画がスタートすることになった。



◇◇◇


小出力ゲイアサプライヤを使った工法によって、王都にはアルテ・ギルドとマイナミ商会によって、次々と新築の建物が建設されはじめた。

王都の従来の設計思想とは異なった意匠の建物が次々と建設されはじめ、王都の景観にも影響を与えつつあった。


「商会の社屋と、自分たちだけの建物であれば、あやつらの進出は見て見ぬふりをしようと思っていたのだがな・・・。」


王都全体を見下ろす、丘の上に位置する王宮の最上階にて、王都に響く槌音つちおとを聞きつつ、呟く人影があった・・・。




第二章 「マイナミ商会社屋建設編」 完

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