第21話 お休みの日1
作業を毎日行うことによって、この世界の時間軸というものもわかってきた。
作業は、結構日の高いうちに終わる。
我々の世界基準で、午後3時ごろには、作業終了の指示が出る。
こちらの夜は暗い。
早い時間ではあっても、暗くなってから出歩くと、盗賊や暴漢に襲われる危険が増すので、現場~街中の移動を夜間に行わないようにしなくてもいい配慮のようだ。
商人も、町中以外では、早じまいだし、出発の時間によっては、途中で夜になりそうだ。というときは、かなり早い時間でも、出発はせず、店で一杯やっている。という感じだ。
やっている作業自体は肉体労働なので、それなりにきついが、普段から現場を取り仕切っている2人は、現場での<立ち回り>は心得ているし、長谷部は、十分体力が備えられているので、問題ない。
朝の7時から、現場は日が暮れるまで。その後、事務所に戻って、図面や資料作りを行う。なんて毎日を送っている普段から比べると、むしろ楽なくらいだ。
どうやって、時間を決めているのかはわからないが、こちらの世界にも朝作業・・・休憩。
昼食・・・作業・・・休憩。という流れがあるようだった。
ただ、その時間は、いすみや田尾はドワーフ達の技術的な質問タイムや、ラジオ体操で顔見知りになった商人や、ギルドからの、建築の相談を受け付けたり。
長谷部は、衛兵たちへの格闘技指南。とあまり休める感じでもない。
休日は、概ね5日に一回程度だが、休日も、泊まっている宿には、さまざまな面々が押しかけてくるので、あまり休めない。
いすみたちは、それでもよかったのだが、そんな休日の朝、宿屋の手配主・・・。メテオスが、ついにたまりかねて、訪ねてきた。
「もう!あんたらいい加減にしなよ!これじゃ、いすみたち休めやしないじゃないか!」
「いえ、メテオスさん。私たちは大丈夫ですから。」
いすみたちは、出稼ぎ労働にきているわけではなく、あくまで情報収集が目的なので、町の人やドワーフと話せるのはむしろありがたい。
メテオスはベッドに座るいすみの横に腰を下ろし、いすみの腕を取る。
「だめだよ!よし!今日一日は、あたしにつきあいな!」
そういうと、メテオスは立ちあがっていすみの手を引く。
「じゃ、タオにハセベ。あとはよろしく!」
いすみをひっぱって、メテオスは出てってしまった。
部屋には、メテオスのなまめかしい香りが残された。
「よろしくされちゃったぜ。」
「よろしくされちゃいましたねえ・・・。」
残された二人はため息をつく。
「メテオスのいうことももっともだ!」
とこの町のギルドの職員の一人。
「おれたちもいつもおしえられてばっかりじゃよくない!」
とドワーフのとりまとめ役の男。
「確かに、日ごろの感謝をしておくべきだな。」
衛兵の隊長。
<俺たちも日頃の感謝をするぞ!>とやる気満々な筋骨隆々やひげ面や傷だらけの勇者に連れられて、似たようなメンツがそろう居酒屋へ駆り出されていく二人だった。
今度は、獣くさいにおいや、汗のにおいが残された。
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