第22話 お休みの日2

それほど大きな町ではないが、王都に近い交通の要所であるし、王都に行く前後に、荷物やその他もろもろのをつけておきたい者のもたらす荷や、物資で、休日の町はなかなかにぎやかなものだった。


王都に入る時には、持ち込む商品に比例して、税を納めなければならないので、持ち込みすぎた場合は、ここで調整のため、安く売っていくものも多いのか、薬草やポーションの瓶なんかもたくさん並ぶ。

その一画は、漢方薬のような不思議な香りが漂う。

効き目がわからないような不気味な薬品を売っている者もいる。

市場を回るついでに、例の煉瓦のような建材や、強化魔法に関する材料や道具の金額も、メテオスの助けを借りて、控えた。

メテオス曰く、持ち込み税の関係で、ここでは関税がかかっていないので、王都よりもはるかに安く手に入るものもあるようだ。

販売目的でないものを王都に持ち込む関税については、わからないが、一時的に持ち込む扱いになる、<カルネ>的なものが使えるのであれば、より、ローコストになるかもしれない。

ただ、ゲイアサプライヤに関しては、王都の指定商店でしか手に入らないという、メテオスの話しだった。


利便性をさしおけば、こういった衛星都市で建物を建てる方が、いろいろと安上がりになったりするのか・・・?等の考えも浮かぶ。


商店街的なところはないが、休日限定の様々な食べ物の露店も並ぶ。

いつもの広場も、露店が軒を連ねて、なかなかにぎやかだ。


湖が近いせいか、魚介を扱う店も多いし、新鮮な野菜も並ぶ。

それらを加工した料理が並べられる出店も並べられ、ラジオ体操で知り合った顔見知りに会うたび、持ってけ、食ってけ。といろいろ持たされる。


「たくさんもらっちゃいましたね。」

両手に持った袋を手に、いすみは、メテオスに微笑みながら声をかける。


いすみの方を見たメテオスは、仏頂面を崩さない。


「もう!せっかく、町に出たのに、イスミはモノの値段とか、建材とかにしか興味がないのかい!

・・・・まあ、事情があるみたいだから、アンタが何をやっている人なのか、どんな身分のモンなのかは、聞かないけどさ、なんで、そんなに一生懸命なのさ。」


最近、メテオスも含め「イスミは某国の第2後継者説」が、町の人たちに、広まってしまったため、メテオスもあまり突っ込んだことは聞いてこない。

いすみも、行動のために、都合がいいので、あえて否定をしないでいる。


「お仕事を一生懸命にやることは普通のことだと思いますよ。ドワーフのみなさんもそうですし、メテオスさんもそうじゃないですか。」


「・・・あたしも、ふだんはそんなに真面目じゃないよ。今回くらい、一生懸命仕事してるのは初めてかもしれないしね。」


一生懸命仕事をする理由は・・・。わかってるんだろ。おい!といすみを見つめるが・・・。


「いろいろお世話になっていますから、お礼をしたいのですが、メテオスさん。なにか欲しいものはありませんか?」


「・・・・まあ、あたしら魔法士は特に道具ってものはないし、アシの荷馬車もこの前直したばっかりだし・・・。」


メテオスの言葉を聞いて、いすみは苦笑いする。


「メテオスさんも、お仕事のことばっかりじゃないですか。素敵ですよ。お仕事の好きな女性って。」


いすみの言葉に、顔を真っ赤にして、メテオスは抗議する。


「あんまりからかわないでほしいね!!あたしは別に、仕事のことばっかり考えてるわけじゃないし!そう!こんな小さな町にはあたしの欲しいものがないんだよ!王都に帰れば、いっぱいあるさ!」


「じゃあ、王都に帰ったら、お礼させていただきますよ。とりあえず、お仕事道具として、新しいローブなんかどうですか?」


この町に来てから、メテオスはずっとダークブラウンの同じローブを着ていた。

魔法士にローブは絶対必要なものなのかもしれないし、色や形状になにか意味があるのかもしれないが、若い女性が着るには、いすみは、ちょっと地味すぎるような気がしていた。


ちょうど衣料品屋らしきものがあったので、メテオスとともに入って行く。


「これなんかどうですか?」


いすみが選んだのは、形状はごく普通の、ダークブルーのローブだったが、よく見ると、波のような模様が入っていて、なかなか凝ったつくりだ。

メテオスが羽織ってみると、エキゾチックなメテオスの顔立ちに、よく似合う。

膝にかかる掛からないかぐらいの丈も、履いている長目のブーツと合わせるとなかなかセクシーだ。


鏡で自分の姿を映してみたメテオスも気に入ったようだ。


「よくお似合いですよ。とりあえず、持ち帰りますので、包んでもらいますか?」


「え、ほんとにいいのかい?それに・・・。」


「いいですよ。ここに来てから、ずっとお世話になっているんですから。それに、魔法士さんにとってのローブって作業着ですよね。私は、人の作業着を選ぶのって得意なんです。」


「・・・。」


いすみに押し切られ、目の細かい麻袋のような袋に入ったローブを愛おしそうにメテオスは抱きしめた。

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