13.ねえ、仮説一
「…離れていろ」
「と、言われても、囲まれてるんだけど」
小声のまま、とりあえず、
一歩踏み出した
少し外れて祠に当たりかけたところを、
そんなことをしている間に、「
「手間をかけさせてくれる」
取り囲むのは、迷彩服を着た男たち。幸を狙ったライトが
迷彩服も黒服に黒眼鏡も、どこの二流映画だと、巽に抱きかかえられたまま、和希は呆れ返った。
だが二人に背を向けた浅葱は、失笑した様子もない。ただ無言で、片腕を振り上げた。
「み、水ッ?!」
迷彩服の集団から口々に、似たような言葉が漏らされる。だが和希には何も感じられず、巽を見ても、こちらも、浅葱を見据えたまま、わずかに困惑顔だ。
改めて迷彩服たちを見ると、まるで大水が流れてきたかのように、身体をのめらせ、もがいたりしている。
狭い場所に密集しているだけに、誰かの振り上げた手が他の誰かに当たり、その為に倒れたりもしている。
だが、黒服の男だけは、和希たちと同じように、何の変化も見られない。
「ねえ、仮説一」
「ほう」
「彼は幻術を使っている」
「ああ」
「仮説二。これに触れていたら幻術は
そう言って、握り締めている腕環を示す。正しくは、原料に使われている鉱石だか何だかだろう。
「俺は?」
「仮説二ダッシュで、ボクをつかんでるからとか? 離れてみたら、たつ兄も水が見えるかも」
「…試すのは後でいいぞ?」
「そう? じゃあ、仮説三。あの黒服もこれを持っている」
「かもなあ。で、何をするつもりだ?」
「たつ兄、ちょっと
落とさないよう時計を腕に
「カミサマなら、
「
「うわ、きいてやがった」
そうと知っても
浅葱は、相変わらず二人に背を向けたまま、微動だにしない。
その向かいで、男がにぃと笑った。
「龍神。あなたは何故、こんな者たちとここにいる?
穏やかな声に、優越感がにじみ出ている。
「あなたの子を奪い、意のままに育てることであなたの監視役に当てた、水瀬。そんな子供とあなたを見捨てて分家に逃げた、辰見。憎み恨みこそすれ、気遣う理由などどこにもないでしょう」
「だからって、そっちに手を貸すことのほうが理由がなさそうだけど?」
突然
和希は、照らし出された男を睨みつけていた。
かちりと、金属音がした。和希の腕から腕環が外され、ぎこちなく、首をめぐらす。
巽が、笑っていた。
「ごめん、和希君。少し幻を見ていてくれ」
その言葉と共に肩を押され、巽にいくらか重心を預けたままになっていた和希は、呆気なく草の地面に倒れ込んだ。
そうして、巽の手が離れたのと前後して、奔流に押される。
「っ…ぅ」
普段触れているものとは比べ物にならない、圧倒的な勢いに押され、そしてそれが頭まですっぽり包む高さが十分にあり、息ができない。目も、開けてはいられなかった。
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