12.少年面食らってるから
「
「何故ボク?」
「今のところ、誰かに外されても許すのは、
「ええ、俺?」
「お前は、
「その通りで」
皮肉気味な笑みが向けられる。和希は、ぼんやりとそれを見ていた。
仲が良さそうで、なんだかずるいなと、意識の端で考える。少し話しただけだろうのに、通じるものがある。
和希は、一人置いてけぼりを食らったような気持ちになっていた。
ああ、違うそうじゃなくてと、和希は息を吐いた。
「
「借りを返すだけだ。当然の権利だとは思わないか? どうやら、この後も邪魔をしてくるようだしな」
「それは、わかるけど。わざわざそれを
「
え、と、和希は声を漏らしていた。
「そう、長良幸に伝えてくれ」
「って待ってえちょっ…!」
和希が手を伸ばしたときには遅く、既に、浅葱の右腕には腕環が嵌められていた。
勢いでがっちりと肩をつかんでしまい、思いがけず至近距離で、夢から覚めたような表情の幸と目を合わせることになった。
「…やあ?」
「っ、なんっ、何やってんだお前っ!?」
「逃げられたーッ! 一方的だずるいッ!」
「た、
「カズ、少年面食らってるから」
「あ。ごめん」
言われて、半ばしがみついていた体を離す。
改めて友人を見ると、驚いたかおは教室にいたときと変わらず、何故だか、泣きそうになった。
上手く言葉が浮かばず、助けを求めて
「少年。話はできたよ、ありがとう。話した内容を聞きたいか?」
「…俺にも、酒」
「勝手に飲みな。浅葱の飲みかけもあるし。ああ、浅葱ってのがもう一人の君の名前らしいぞ、少年」
幸が苦いかおをしているのは、馴れ馴れしく話しかけられるからか、気分でも悪いのか。
和希は、そう考えてから、自分の呼び方も変わっていることに気付いた。むしろ、戻っている。
幼年時のそれ。
そう呼ばれていたときは、和希も「たつにい」と呼んでいた。やめろと言われ、今の呼び方になってしまったのだ。
和希は、幸がグラスに半分ほど残っている上から更に
巽はウイスキーを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます