11.少なくない死傷者、か
「妙なことは考えないでください」
「ここで何をやろうとしてるんだ? さすがに、目の前で人体解剖でもされると、後味が悪いんだが」
「そんなことはしません」
それだけ言って、もう少し
ぐったりとしている様子が見て取れた。大量の汗をかいているようだ。
「幸?」
呼びかけに口を開きかけたときに、突然、びくりと幸の体が
「失礼。ですが、
「…電気を流したのか。何故」
「体力は削っておくにこしたことはありませんから」
「まだ、何をするつもりなのか訊いてなかったな」
幸は、声が出ないのではなく、押し殺しているようだった。やがて、電流が止まったのか、痙攣が収まり、荒くなった呼吸と、汗だけが残る。
さっそく、計測された反応の記録や分析に取り掛かる白衣たちの動きが感じられた。
和希らの正面に、箱に入れられた銀色の輪状の金属が五つ、運ばれた。一つが少し大きめで、他の四つは大体同じくらいの大きさのようだ。
「
「何故?」
「外さないなら、それでも構いませんよ。ただしその場合、これだけ体力の落ちている状態だと、下手をすると死に至るかもしれませんね」
「どういうことだ」
これは、俺を抑えるためのものだ。
昔はただの
昨日の夜――もう、随分と前のようにも思えるけれど、そのとき。幸が口にした言葉を、思い出す。
彼らは、その状態に戻そうとしているのだろう。そうして、和希と
相手は、「神」なのだから。
「杉岡博士が提唱し、あちらの器具からその腕環に、制御石を変えました。その取替えの際に、少なくない死傷者が出ました。全て
「その証拠が、少なくない死傷者、か」
「はい。付け加えれば、それからしばらく、彼も不調続きだったようですよ。一時は、この研究が終わるかと思われたほどに」
「なるほどね。外すだけでいいのか?」
「はい」
いつの間にか、五つの輪の収まった箱の方には、五人の黒服と白衣の混成隊が控えている。
和希は、幸の指を握った。電撃のせいか、指先は冷たかった。
「枷が邪魔だ」
即座に、外すように指示が下る。
左手だけ外れたその下の皮膚が、電流のせいか軽く
これでは、腕環の下は、より
「幸。外すよ」
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