11.自己紹介は不要ですか
「遅かったな」
エレベーターで到着した社長室では、部屋の主よりもむしろ、
ガラスのテーブルを挟んで向かい合うソファーの奥に置かれた、どっしりとした机と椅子。その机に肘をつき両手を組み合わせた姿は、三流映画の黒幕のようだった。
もっとも、記事自体は読んでいなかったため、名前は知らなかったのだが。
それにしても――肥満して
「座りなさい」
「ああ、自己紹介は不要ですか」
ここまで案内してきた男は、部屋の中には入ってこなかった。外で番犬よろしく、見張っているのだろうか。
「君をここに呼んだのは、他でもない。是非とも、協力していただきたいと思っているのだよ」
「はぁ」
「我々は、今、
「小学校の理科で習う程度のことですからね」
相手のあまりに表面を
「そうだろう。それほどに、これらの問題は深刻化している。だが、対応が整っているかといえばそうではない。何もできずに、手を
和希と巽が、それぞれに目で「どうする」と会話している間に、話は先に進む。今や男は、立ち上がり、演説の体勢に入っていた。
「太古の時代、この地球を支配していたものがあった。我々はそれを神と名付け、
タツミ、と呼びかけられ、うっかりと巽も反応してしまう。
二人はそれに苦笑いしたが、ぎらぎらとした目つきの男は、離れた位置ながら和希の眼を覗き込む。
「実に驚くべき存在だった。あれは、天候も気候も、風の流れまでも、自在に操れるのだ。それを人が制御できれば、問題の多くが、すぐにも解決するとは思わないかね?」
「それが、こちらにどう関わってくるんです」
「気付いていないのかね。君は、あれのアキレス腱にもなれる。あの化け物は、君のことを気遣っただろう」
「つまり、人質に取りたいと、そういう申し出ですか」
「進んで協力してほしいといっているのだよ。君の能力を
もういい加減にうんざりとしたが、男の目は、一層に光を放つ。ぬらりとした感触さえありそうで、和希は、知らないうちに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます