10.健在なりし竜見志郎
相変わらず耳に押し込んだままのイヤホンからは、既に何度か聞いた音声が流れている。
盗聴器は既に露見し、親切にも、情報提供を
素直に正しい事態を教えてくれているとは限らないが、聞こえた会話を繋ぎ合わせれば、そういうことになる。
「さて、
「とりあえず、
はじめは
こうなるとほとんど意思を変えない、という態度で同行を
ちなみに、借り物の国産セダンは、本来の持ち主を呼びつけて番をさせている。
当然のように他人をあごで使う巽に、和希は毎回、漫画で定番の悪の生徒会長みたいだなあと、中途半端な感想を持つ。
視線に
入ってすぐの受付には、妙に垢抜けた女性が座っていた。巽はともかく、和希を見て目を丸くする。なにしろ、自己流山菜摘みの格好のままだ。
「すみません、
「…お約束はおありですか?」
「どうでしょう。
笑顔で返すと、戸惑った様子のまま、制服だろう薄いピンクのシャツに白いベストの女性は、受話器を取った。
短いやり取りは予想通りのもので、受話器が戻されたると、案内が来ると告げられた。
和希は、巽と視線でやり取りすると、来客用に置かれたのだろう無駄に豪勢なソファーに腰を落とした。受付の女性は、まだ少し、不思議そうにこちらを見ている。
「健在なりし竜見
皮肉を言うわけでもなく、淡々と口に出されたのは、和希の祖父の名だ。
和希は、こちらは口の端を歪め、肩をすくめた。
「さあ。過去の亡霊か、竜見和希の名か。わざわざ呼びつけたのだから、後者だと思うけど」
「高見ってのが当面の敵か?」
「本当かどうか怪しい情報によると、そうらしい。
「ちなみに、今まで会った中には?」
「覚えがない」
そうか、と言って、巽は腕時計を見た。飯食い損ねたな、と言うが、正午など
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