第51話 類人族の英雄

「お前・・・!」


もう自分に残された物はない。

最大のチャージも使い切った・・・でも・・・


「邪魔をするとは・・・あまりにも愚か。そして、数秒生き延びた汝に、祝辞を贈ろう」


神が無感動に言う。


「では、今度こそ消えるが良い(呆)」


ブブッ


神の懐が震える。


「汝は幸運よな。しばし待て(確認)」


神が懐からスマホを出し、ロックを解除。

何か打っている。

やり取りしているようだ。


・・・今のうち・・・?


「世界に告げる」


色欲増魔デウスブースト無しでどこまでいけるか・・・


「集え・・・集え・・・集え・・・」


頭の中で構築・・・その塊を外に出し、それを組み上げていく。


「・・・何・・・バフォメットの奴がこの世界に・・・?関係者の写真・・・わざわざ送られても、余とは関係ないのだが(困惑)」


ん?


「・・・」


神がスマホと、俺を何度か見比べ。


「勇気ある者共よ。汝等の言も一理ある。良かろう、人間を有利としていた紋章魔法に関しては、これの存在を破壊する。汝等の肩を持つ訳ではない。対等の条件ならあがける、というならあがくが良い」


神がくるっと踵を返すと、立ち去ろうとする。

待てよ。


「おい・・・待てよ!」


神を呼び止めようとした俺を、山羊さんが止める。


「待ちいや、兄ちゃん!それより、姉ちゃんに魔力を注いだり!このままじゃ危険や!」


・・・助かるの?!

あれ、イファナには無駄だって?


「魔力を注げば、息を吹き返す。一番効率が良いのは、口から口へ移す方法や。時間がない!」


・・・そうなのか。

ラックルに顔を近づける。


胸が苦しそうに上下している。

苦しいのだろう。

鼻息が荒い・・・


・・・


息してないか?


「・・・リーン、無傷だし、生命力もしっかりしてるにゃ?」


イファナがきょとん、と小首を傾げる。


「・・・ラックル・・・?」


俺が呼びかけると、


「・・・うん」


ひょこり、とラックルが起き上がる。


「無事だったか、リーン!」


ムニスが叫ぶ。


ラックルは、照れくさそうに、


「うん・・・この山羊さんに貰ったペンダントが護ってくれたみたい」


ああ、あらかじめ渡してあったのか。

有り難う、山羊さん。

さっきの口づけって何だ。


ふと気になって鑑定。


盾のペンダント

 性能:攻撃の概念を無効化

 備考:超新星爆発を超える威力の攻撃を受けた場合、

    威力を666倍にして跳ね返す。


良く分からんが、強いらしい。

超新星爆発を超える威力で撃たなくて良かったね。


山羊さんがペンダントを回収している。


「にゃあ・・・バフォメット様の名前で逃げていったみたいだけど・・・バフォメット様は神より強いにゃあ?」


イファナがぽそり、と言う。


「いや、そんな事あらへん。ほら、バフォメットって全知やろ?たまたま、神の奴の秘密を見てしまってな。それ以来、バフォメットに苦手意識持ってるみたいやねん」


全知なのか。


「秘密って何だろうね」


ラックルが興味深そうに言う。


「何でも、神の奴、重度のケモナーらしいで?類人族が悲惨な目に遭っているのを見るのが好きらしいねん。厄介な趣味してはりますわ」


・・・それで人間に支配させてたのか。


「もっとも、本来はもっと獣に近い方が好みらしいねんけどな。種族はある程度規格が決められているから、これが限界やったみたいやな」


それで羊踊らせて悦に入っていたのか。

あと、結局普通に秘密ばらされてるっていう。


「・・・ともあれ、これで類人族は解放された・・・これならきっと、リーンも」


うんうん、と、何故か一同が頷く。


「当然だよ、リョータは類人族の英雄。リーンも、きっと喜んで全てを捧げるよ」


ラックルが勢いよく抱きついてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る