第49話 ほうおうほうおう

法皇の間に戻ると、法皇が待ち構えていた。


「紋様呪核宝晶が一斉に停止したからもしやと思ったが。まさか人の身であの警備を抜ける存在が居るとは」


法皇が告げる。


ディオライ

 職業:法皇

 種族:鳳凰

 レベル:4300

 強さ:神がかっている

 攻撃力:天地を揺るがす

 防御力:星を殴るよう

 備考:不死


あ、強い。


「此処は任せて逃げて下さい」


羊が進み出る。


「受けて下さい、我が渾身の一撃!」


羊の角が光り、法皇に向かって飛ぶ。


ひゅ


法皇が一瞬で羊との間を詰めると、


ゴウッ


錫杖で振り抜く。

羊が音も無く消える。

ちょ。


「そもそも、何故巫女たるうぬが加担しておるのだ」


法皇がメメモムに問う。

や、羊人族、普通に碧海の民として反抗してましたよ。


「人間のがこの世を支配する今の構造は歪んでいますわ。この世は夫が支配するべきです!」


前半までまともだったのに。


とにかく・・・詠唱を。

詠唱は、頭に浮かぶイメージを、そのまま口にしている。

どんな詠唱になるかは、俺にも分からない。


色欲増魔デウスブースト──第一席リーン!」


最初から間違っている件。


ギッ


世界が歪む音がする。


「世界に告げる━━羊は液体であり、個体である」


何でだよ。


「す・・・凄い魔力にゃ」


イファナが震える声で言う。


「羊在るに因り、彼在り」


ゴウッ


魔力が渦巻き、光りが散る。


「凄いですわ・・・」


メメモムが感動の声をあげる。


「ぬう・・・?貴様、させぬ」


法皇が無数の光を放つ。

しかし、俺を渦巻く魔力に取り込まれ、消える。


「羊は流転する」


光が・・・集まり・・・


「ぬう・・・恐ろしくも頼もしい」


ムニスが笑う。


「羊は哺乳類である」


知ってる。


バジバジ


4つの光が・・・


「捧げるよ・・・僕の全て」


背中のラックルが囁く。


四天羊の召喚サモントリグラフ!」


詠唱が完成。

現れたのは・・・


蒼い羊、紅い羊、緑の羊に、紅い羊。


それぞれ武器を咥えている。

紅い羊が騎士剣と騎士槍。

蒼い羊と緑の羊が斧。


めえええ!


紅い羊同士、斧持っている同士で揉め始めた。

被りたくない気持ちは分かるが、今は戦って後で決めてくれ。


法皇が、無数の紅い剣を召喚、羊達に投げつける。


ふっ


騎士槍を持った紅い羊が息を吹き、剣を散らす。

強いらしい。


「行け!」


俺の号令に、羊達が四散。

そして、騎士剣を持った紅い羊が法皇に迫り・・・ジャンプ・・・からの頭突き!

おっと、届かない。

・・・からの、体を回転させ、脚でキック!


「ぐふっ」


法皇がよろめく。

あれ威力あるのか?

というか、剣はどうした?


タッ


間髪入れず、緑の羊が背後上空から迫る。

斧を空中に投げ、炎のブレス!


「ぐおおおおおお」


鳳凰に炎って効くのか?

斧を華麗にキャッチ。


3体目・・・騎士槍を持った羊が駆け・・・


ざくり


騎士槍を地面に突き刺すと、


めえええええええ


吠える。


「ぬう・・・馬鹿にしおって!」


法皇が法衣を脱ぎ捨てると、人間の姿が・・・鳥になっていく。


「馬鹿にゃ・・・あれは・・・鳳凰にゃ?!」


イファナが叫ぶ。


「そんな・・・伝説上の存在じゃ・・・」


ラックルが背中にひっついたまま呻く。


「羊さん達が頼りだが・・・これは厳しいか・・・」


ムニスが呻く。


「祈ります・・・羊さん・・・頑張って」


メメモムが祈りを捧げ。

・・・というか、集中攻撃すれば良いのでは。


紅い羊が駆ける。

鳳凰が翼を広げ。


羊が一瞬で間合いを詰めると、


ガシュッ


右翼を噛み千切る。


「ぐおおおおおお?!」


ザンザンッ


背後から光の槍を無数に射出、鳳凰を滅多刺しにする。

鳳凰は地に縫い止められ、


ゴッ ガッ


回し蹴り、パンチ、キック・・・息もつかせぬ連撃を加える。


コオオオオオオ


鳳凰が天に向かって嘶く


「あれは・・・ヒーリングクライ!傷を回復させる気だ!」


羊が、くん、と天に向かって顔を突き出す。


ギイイイイイイイ


鳳凰の周囲の空間が・・・・ひび割れる。


「あれは・・・因果の改竄・・・!ヒーリングの効果が反転します!」


メメモムが叫ぶ。


羊が槍を咥えると、鳳凰に向かって駆け・・・直前で回転、華麗な回し蹴りを決める。

鳳凰は吹き飛び、壁に叩きつけられ・・・


「ぐふ・・・」


崩れ落ちる。


どやあ


羊がドヤ顔をキメる。


「ああっ、あの羊あいつだ!!」


ラックルが泣きそうな声で叫ぶ。

どいつだよ。


とてとて


蒼い羊が駆け寄り、


さく


斧を突き刺す。

とりあえずやめたげて。


「・・・勝った・・・やった、生き残ったんだ・・・!」


ラックルが叫ぶ。

うん、フラグ建てるのやめようか。

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