第48話 虚言癖

「喋ったにゃあ?!」


イファナが驚く。


「わっ、猫が喋った?!」


羊が驚く。


「にゃ?!類人族だから喋るにゃあ!失礼な羊だにゃ!」


羊は恥じ入ると、


「すみません・・・私共の常識では猫は喋りませんので・・・大変失礼しました」


素直に謝罪する。


「・・・異世界から来た、といったところかしら」


メメモムが興味深そうに言う。


「羊が喋ったああああああああああああ?!」


羊が驚く。

待てや。


「・・・大変失礼しました。私共の常識では羊は喋りませんので」


羊が謝罪する。


「まあ、異世界はそれぞれ常識は異なりますし、仕方ないですわ・・・あれ?」


メメモムが何か引っ掛った様に小首を傾げる。

俺達おちょくられてるだけじゃね?


「羊殿、奴等の足止めを頼めるか?」


ムニスが羊に尋ねる。


「・・・難しいですね・・・奴等は余りにも強い。5分間、それだけなら何とか」


5分か・・・

それで何処まで進めるか。

とりあえず、急ごう。


「リョータ、チャージするね」


ラックルがむぎゅっと背中にくっつく。


「よし・・・行こう!」


羊に任せ、先を急ぐ。


羊は敵の一体の背後に移動すると、後ろ蹴りで一体粉砕する。

もう一体が魔法弾を放つが、吸い込み、飲み込む。


ジュッ


目からレーザーを放ち、一体焼き尽くす。


ザンッ


召喚した剣を口に加え、一体両断。


もう一体を、蹄で抑え込み、砂時計を出す。

落ちきるのを待ってから、そのまま蹄で潰す。


「ジャスト5分、状況終了です」


倒すのに5分かよ。

あと、最後のずるくないか?


「圧倒的な強さじゃな。流石イファナの・・・」


ムニスが呻く。


ぎゅうう


ラックルが抱きつく強さを強める。


羊さんに敵の排除を任せつつ、進む。

しばらく階段を降りつつ進むと、広間に出た。


中央には輝く球。

周囲には無数のクリスタルが浮かんでいる。


「此処が━━」


メメモムが話そうとしたのを、羊が遮る。


「此処が、神央玉の間。神央玉にアクセスする為には、4種類の異種族が、タイミングを合わせ、魔力をこめる必要が有ります」


ラックル、イファナ、ムニスが頷く。


「え?」


メメモムが小首を傾げる。


羊はこくり、と頷くと、神央玉に近づく。

神央玉が徐々に濁り、光が消えた。


「神央玉にアクセスし、神央玉と紋様呪核宝晶を停止しました」


羊がこちらを振り返り、告げる。

お前が解除するんかい。


「「「「え」」」」


ラックル、イファナ、ムニス、ミトルスの呻きがハモる。


「異種族云々何て設定は無いですわ。そもそも、人間有利の機構で、管理が羊人族なのですから、そんな制御有り得ませんわ」


メメモムが呆れた様に言う。

・・・実は普通に信じた。


「急いで下さい。此処はもうすぐ崩壊し、この城は地面に落下します」


羊が告げる。


「・・・大変だ」


ラックルが焦りの声を漏らす。


「にゃあ・・・此処は城ではないし、空に浮いてもいないにゃあ・・・?」


イファナが困った様に言う。


「崩れる訳もないですわあ」


メメモムが困った様に言う。


この羊、強いけど、虚言癖が有るな。


どやあ


ドヤ顔するな。

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