第46話 NG
朝。
無事、夜を乗り切った。
特に何も無かったのは拍子抜けだ。
未知の危険に対する恐怖から、相当ドキドキしたせいだろうか。
凄まじい威力のチャージが溜まっている。
一夜のチャージが全て同一にチャージされた為、他のチャージも残っている。
期せずして、ラックル、イファナ、ムニスのチャージが混在している。
ラックルのチャージ程ではないが、全て強力なチャージだ。
「ラックル、おはよう」
声をかけるが・・・朝になって無事が分かり、我に返ったのだろうか。
照れ隠しなのか、別の理由なのか、凄く不機嫌だ。
「何で・・・何もしないのさ!」
噛みつかんばかりの勢いでラックルが言う。
襲撃が無かったのは普通に喜ぼう?!
「ラックル、今日は大切な日だ。全力を尽くすぞ」
今日の成果によっては、リーンに見直して貰える・・・!
「・・・うん」
ラックルも真剣な顔になり、頷いた。
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「良し、行くぞ」
みんなに声をかける。
ラックル、イファナ、ムニス、メメモム、ミトルス。
そしてエルフの精鋭。
計20名程。
精鋭部隊だ。
ダンジョンに侵入し、紋様呪核宝晶の機能停止。
それが目的だ。
穏健派は、紋様魔法の解析を進めていて、紋様呪核宝晶にさえ辿り着けば安全に機能停止できるらしい。
機能停止後、破壊する。
「此処から侵入できるはずです」
エルフ達が、岩に隠された洞窟を指し示す。
「ただ、読まれていないかが心配ですね・・・待ち伏せされていたら危険です」
それは駄目じゃないのか?
「羊を先行させよう」
俺が羊を放ち、羊が慎重に歩いていく。
ガシャーン
天井が落ち。
羊がいた場所には吊り天井。
うにゅう
隙間から羊が出てきて、てくてく歩く。
「・・・空中駆ける時はぱっからぱっから、結構大きい音立てるのに・・・静かに歩けるじゃないか」
ラックルが呻く。
そこは今気にする部分じゃないと思う。
ジャギジャギ
壁から無数の槍が飛び出て、羊さんを貫く。
血などは出ない。
ビジュアル的配慮は怠らないらしい。
うにゅー、ぼとん
液体っぽくなって、槍を抜け出し、地面に落ちる。
みょん
羊の形に復元する。
ピコピコ
音を立てて通路を歩く。
復元出来てないからね。
ごおおおおおお
壁から炎が噴き出て、羊が炎に包まれる。
消し炭。
ピシ・・・パリッ
消し炭が割れ、中から羊さんが出てくる。
ガション、ガション
羊さんが音を立てて進む。
え、これつっこむの?
羊さんがくるっとこちらを向き、OKと書かれたプラカードを掲げる。
OKじゃないぞ。
「にゃあ、読めないけど、何て書いてあるにゃ?」
イファナが小首を傾げこちらを見る。
「リョータ、読んでよ」
ラックルが言う。
お前が読めよ。
「罠がいっぱいだからこっちの道は使えないってさ」
俺の言葉に、羊さんがびくっとして、泣きそうな顔をする。
駄目に決まっているだろう。
「・・・そうなると、別のところから侵入しないと・・・」
ラックルが困った様に言う。
むしろ、この通路を自信満々に作戦に入れたお前等が不安になるのですが。
「
ゴウッ
俺の体を、白い光が包む。
尚、名前を言う意味は無いし、光の色は自由に選択できる。
「・・・凄い力・・・」
ラックルが飛ばされるのをこらえる様に、手で遮りながら言う。
別に風とか魔力の奔流とかは出ていない。
「
目の前の空間が湾曲し、ゲートが現れる。
「これで結界の中に入れるはず。そこの通路よりはマシだと思う」
こくり。
一同、顔を見合わせ、頷いた。
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