第45話 一級建築士

「明日・・・だね」


ラックルが、美しい声で囁いた。

夜、自室。

監視、という良く分からない理由で、ラックルが俺の部屋に居座っている。

お気に入りの寝巻きなのか、ちょっと透けた可愛らしい服を着ている。

可愛い(見た目は)女性が、夜に男の部屋に来る、しかもエロい服着ていると、手を出したくなるんだぞ。

ラックルはそういうのに疎いから、無邪気にやっちゃうんだよな。

もしくは俺をそれだけ信頼しているのか。


俺が提案した作戦は、単純なものだ。

3勢力が力を合わせ、中央神殿を落とす。


碧海の民が各地の紋章碑に干渉し、結界を弱める。

蒼天の民が各地、または近辺で遊撃を行い、兵を引きつけ。

穏健派が隠し通路から神殿に侵入、紋様呪核宝晶に干渉して停止させる。

特に、『隷属』と『契約』の紋様呪核宝晶は、慎重に停止する必要がある。


明日、その会議を詰め・・・そのまま、明日の夜に決行する。

本当は新月の夜が、結界が弱まって良いのだけど。

警戒も強くなるし、情報が漏れても困るので、速攻で勝負に出る。


とりあえず、今日は早く寝ないと。


「リョータ・・・なんかさ・・・凄いよね。こうやって、みんなが集まっていくのって。今・・・凄く・・・心強いんだ。無謀な夢だった、人間の支配からの解放・・・奇跡の様なキミとの出会いから・・・本当に色々あった。そして、今此処にみんなが・・・いる」


「ちょ」


待て、このタイミングで過去語りや、今の充実を語るのはやめろ。

なんかフラグっぽい。

あと、此処にみんなは居ない。

君が追い出したんだろ。


「不安はあるけど、大丈夫。君が居るから。君が居て、みんなが居て・・・うん、もう何も怖くない」


「おい・・・」


だから待て。

わざとか?

わざとなのか??


ラックルが意を決した様にこちらを見て、


「リョータ・・・明日の戦いが終わったら、話したい事がある・・・聞いて欲しい」


真剣な顔で言う。

絶対わざとだよな?!

フラグが凄い速度で建築されてるんですけど!


「ラックル、君は何を」


ラックルの肩を掴む。


「ひゃあ?!」


ラックルが可愛らしい声をあげる。

ラックルが真っ赤になると、視線を泳がせ、


「こ、こんな所に居られないよ。僕、自室に戻るね」


そう言うと、部屋を出て行こうとする。

待ちやがれ。


「駄目だ!今日は一人にさせないぞ」


ラックルを強く押さえ込む。

これ、君、明日を無事迎えられないパターンじゃねえか。


ラックルは驚いた様な表情をすると、


「うん・・・分かった」


出て行くのを諦めた様なので拘束を緩めると、


「シャワー浴びてくる」


そう言ってシャワールームヘ向かう。

さて・・・とりあえずベッドに入りつつ、羊を召喚。

眠気と疲労を食べて貰う。

今夜は、寝ずに警戒しなければ。


シャワーから、バスタオルを巻いた状態でラックルが出てきた。

あれ、着替え持って入るの忘れた?

そのまま、何故か俺のベッドに入ってくる。

どういう状況だろう・・・?


「その・・・初めてで・・・」


「うん?」


「・・・頑張る」


何を?!


そこで、気付く。

ラックルが震えている事に。


なるほど。

全てを理解した。


さっきフラグ建てまくった事に、今更気付き、命の危険に怯えている。

裸になったのは、俺にチャージして危険対処を有利にする為。


「大丈夫だよ、ラックル。俺に全てを任せてくれ」


「・・・うん」


接触面積を増やす為、俺も服を一部脱ぎ、そっとラックルに口づけし、そっと抱き締めた。

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